日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会(Council for Better Corporate Citizenship=CBCC、立石信雄会長)は、2月28日、東京・大手町の経団連会館で、ヒューレット・パッカード倫理調達ディレクター兼グローバル・プログラム・マネージャーのボニー・ニクソン・ガーディナー氏を招き、サプライチェーンにおける企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)の推進に関する懇談会を開催した。懇談会には、各社のCSRや調達部門の関係者を中心に44名が出席した。
経済のグローバル化に伴い、多くの日本企業は、自社の生産拠点のほかに、生産委託や資材調達などを通じて、グローバルにサプライチェーンを展開しており、企業を取り巻くステークホルダーから、サプライチェーンにおけるCSRの推進を求められるようになってきている。そこで、この日の懇談会ではガーディナー氏から、欧米のエレクトロニクス・ICT業界の先端企業が中心となって、各社の行動規範の共通化など、業界共通のサプライチェーン管理ツールとして策定した「電子業界行動規範(Electronic Industry Code of Conduct=EICC)」の概要や今後の課題などについて説明を聴いた。
ガーディナー氏は、EICCは、米国のICT企業であるIBM、デル、ヒューレット・パッカードとこれらの納入契約を結んでいるサプライヤー5社が中心となって、グローバルなエレクトロニクス・ICT業界のサプライチェーンにおいて、それぞれの国の法令順守を求めるとともに、職場の安全衛生、敬意と尊厳を伴った労働者への配慮、製造工程における環境保護など企業の社会的責任を共同で推進するために策定された行動規範であると説明。労働、安全衛生、環境保全、マネジメント・システム、倫理の5分野から構成され、現在では、ソニー、インテル、マイクロソフト、シスコシステムズなどのほかに、欧州のグローバル・eサステナビリティー・イニシアチブ(GeSI)とも連携するなど、EICCへの参加企業が急速に拡大していると指摘した。
また、ガーディナー氏は、エレクトロニクス・ICT業界の特徴として、競合他社までサプライヤーに含めて考えたとき、サプライチェーンが複雑に絡み合っている点を挙げ、EICC行動規範は、サプライヤーが個別の取引先の評価基準やアンケートに対応するための無駄や重複を省き、効率的に対応できるよう、監査や報告活動などに関する統一的なアプローチを提供している点を強調した。
さらに、ガーディナー氏は、サプライヤーに対する監査は、単に不具合を指摘して終わらせるのではなく、サプライヤーに対する訓練やサポートが重要であると述べた。そして、EICCの取り組んでいるサプライヤー・エンゲージメント・モデルでは、サプライヤーは、CSR要求項目に基づいてリスク評価を行うことからスタートし、自己評価や外部監査を通じて、継続的に改善を繰り返し、取引先と一緒になって、能力向上に取り組んでいることを紹介した。
その他、ヒューレット・パッカードのSER(Social and Environmental Responsibility)調達の取り組みについても触れ、製品サイクル全体によるサステナビリティー推進やパートナーシップ志向による監査の取り組みなどについて説明したほか、サプライチェーンに対するNGOの監視や批判に関しては、同業他社とも協力し、真摯に対応することが重要であると説明した。