次代の産業界を担う創造的なリーダー養成をめざす「日本経団連フォーラム21」第18期生・32名の修了式が11日、都内で行われた。
修了式のあいさつで同フォーラムのチーフ・アドバイザーを務める御手洗冨士夫日本経団連会長は、メンバーに対し、「このフォーラムを通じて得られた刺激や発見、すなわち『気づき』といったものをきっかけとしてこれからも自分を磨き続けることを期待する」と述べた。また御手洗会長は、「これからの経営者に一番重要な資質は、スピード感と変化に対応する『変身力』である」と指摘。経営者は、変化を見極め、それに対して勇気を持って、果断にスピーディーに応じていかなければならないことを強調した。また現代の経営については、「決まった路線をたどっていればよいというものではなく、道のない海のような場所を最も合理的で、経済的で、スピーディーな方法を見つけながら、走っていく航海のようなものである」と語った。
続いて茂木賢三郎アドバイザー(キッコーマン副会長)は、「第二次大戦後に日本の経済界で重きをなした木川田一隆氏は『経営者の社会的責任』ということを言っているし、さらにさかのぼれば、渋沢栄一翁が『論語と算盤』の中で経済と道徳の合一ということを説いている。そういう偉大なる先達の、本当の意味で地に足の着いた、観念論ではない経営哲学をわれわれはもっと学ばねばならないという思いを新たにしている。これからの日本のみならず、人類社会の長期的な発展のために、この1年間学んだことを活かしていただきたい」とメンバーを激励した。
また寺島実郎アドバイザー(三井物産常務執行役員・戦略研究所所長)は、客船「飛鳥」を使った洋上合宿で伊勢神宮を参拝したことに関連し、「飛鳥」船内で空海に関する文献を読んだことを紹介。空海は唐から密教を日本にもたらしただけではなく、土木工学や薬学、冶金工学の先端技術を持ち帰ったプロジェクト・エンジニアとしての側面を持った人であり、長安で異文化に触れた国際人のさきがけであったなどと説明した。また寺島アドバイザーは、フォーラム21に参加することでつくられた異業種ネットワークは、「自分を支える、今後の心強い資産となる。こういう縁を大切にしてほしい」と述べた。
今後の活躍への期待を込めて、御手洗チーフ・アドバイザーから一人ひとり修了証書を手渡されたメンバーは約1年間の講座を振り返り、「変化に対応していかなければ生き残っていくことはできないが、変えてはならないこともある。『不易流行』ということをいろいろな角度から教わった」「リーダーシップとマネジメントの違い、リーダーの役割・資質とは何かを学んだ」「自分のキャリアを振り返り、今後のあるべきキャリアについて考えることができた」「自分の強みを伸ばしていくことが重要だと知った」「知は力なりという気づきの機会を与えてもらった」「自分の立ち位置というものについて考えるスタートの機会となった」「自分の世界を広げるチャンス、視野拡大の機会となった」などの感想を述べた。
日本経団連フォーラム21は、経営幹部育成を目的に、1990年に設置したもので、日本経団連会長がチーフ・アドバイザーを務める。企業の役員や部長クラスのメンバーが定期的に集まり、企業経営を中心に社会、国際、時事問題など多岐にわたる分野を、専門家や識者の講話、メンバー同士の討議などを通じて学ぶ。その他、海外視察、洋上合宿なども行い、相互啓発を図るとともに、リーダーとしての識見を高める。
2008年度第19期は、5月に開講する。