日本経団連タイムス No.2897 (2008年3月13日)

21世紀政策研究所が第53回シンポジウム

−「通信と放送の融合をめぐる法制の在り方について」をテーマに


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は慶應義塾大学SFC研究所と共催で、2月26日、東京・大手町の経団連会館で、第53回シンポジウム「通信と放送の融合をめぐる法制の在り方について」を開催した。同シンポジウムには、会員企業・団体、政府関係者など約130名が出席した。

当日は、宮原理事長の開会あいさつの後、21世紀政策研究所と慶應義塾大学SFC研究所による共同研究プロジェクトのアドバイザリーグループの米・ジョージメイスン大学のトーマス・ヘイズレット教授、英・雑誌エコノミストのケネス・クーキエ特派員、韓国・延世大学のイ・ミョンホ教授が各国の状況について基調講演を行った。続いて、慶應義塾大学の中村伊知哉教授と國領二郎教授が対談形式で会場からの質疑を交えてわが国の融合法制の在り方を議論した。

第二部では、最初に総務省情報通信政策局通信・放送法制企画室の内藤茂雄室長が通信・放送の総合的な法体系に関する研究会報告書のポイントを説明した。続いて、共同研究ワーキンググループの韓国・ソウル国立大学のキム・サンベ教授、英・エセックス大学ディレクターのクリス・マーズデン氏、日本経団連産業第二本部の上田正尚情報グループ長、慶應義塾大学の金正勲准教授が研究成果を発表し、慶應義塾大学の土屋大洋准教授の司会でパネル討議を行った。

基調講演の中でヘイズレット教授は米国において通信分野で政府の規制が民間の投資にどのように影響したかを報告し、規制緩和が競争を促進し、新たなサービスが市場に生まれる好結果をもたらしたことを説明した。またクーキエ特派員は、日本は、EUと米国での失敗を教訓とすべきであるとして、企業は融合をビジネスチャンスととらえること、市場を利用した規制が有効であることを訴えた。イ教授は韓国においては通信と放送を異なる官庁が管轄し対立が続いていたが、政治決着により一本化される予定であることをIPTVの事例などを交えて紹介した。

対談で中村教授と國領教授は、わが国の融合法制議論において、サービス分野での規制緩和により市場規模を拡大することが重要であり、広告の世界でもグローバル化が進む中、攻めに転じる制度設計が必要であることなどを議論した。参加者との間では、規制を担当する新たな第三者機関設置の必要性や著作権との関係などについて活発な質疑応答が行われた。

第二部では、内藤室長の説明に続き、上田グループ長が2月に日本経団連が発表した新たな提言「通信・放送融合時代における新たな情報通信法制のあり方」の内容を説明した。キム教授およびマーズデン氏は、韓国および英国における規制の仕組みや課題を紹介した。金准教授はメディア融合とその社会的意味についての考察を述べ、異業種参入が増えることで消費者に多様なサービスが提供されることの重要性を述べた。國領教授は閉会あいさつで、海外における議論を参考としつつも、わが国独自の新たな法制をつくっていく必要があると指摘、シンポジウムを締めくくった。

Copyright © Nippon Keidanren