日本経団連は2月29日、東京・大手町の経団連会館でWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)との共催で、地球温暖化問題に関するセミナー「低炭素社会に向けた産業界の役割」を開催した。当日は会員企業等から200名余りが出席、豊田章一郎日本経団連名誉会長(WBCSD副会長)の開会あいさつ、甘利明経済産業大臣の来賓あいさつに引き続き、スティグソンWBCSD事務総長の基調講演ならびに日米欧の産業界の専門家によるパネルディスカッションが行われ、最後に御手洗冨士夫日本経団連会長が閉会あいさつを行った。各氏の発言要旨は次のとおり。
1994年から98年まで、経団連(当時)の会長を務めたが、この間、環境問題をはじめ企業の社会的責任への取り組みの重要性を強く感じ、「環境自主行動計画」を策定したほか、企業の社会貢献活動を推進した。WBCSDは日本経団連と多くの面で共通の考えを有しており、2003年には正式な協力関係が締結されるに至っている。
わが国が掲げる、「2050年に世界全体の温室効果ガスの排出を半減する」という目標達成への道のりは、容易ではない。先進国が50年に完全なカーボンフリーの社会を実現したとしても、途上国で60%の削減が必要と言われており、そのためには、先進的原子力発電、燃料電池車等、さらなる「技術のイノベーション」が不可欠である。産業界は将来のあるべき低炭素社会に向けた道筋・政策を議論し、WBCSDの「Policy Directions to 2050」のような積極的にメッセージを発信していく必要がある。本日のセミナーがその契機となることを祈念している。
地球規模で実効的な温室効果ガスの削減を推進する上では、すべての主要経済国が参加できる仕組みを構築することが不可欠である。福田総理大臣がダボス会議で言及したとおり、わが国は主要経済国と共に国別総量目標を掲げて削減に取り組んでいくが、その際はエネルギー効率をセクター別に割り出して積み上げることで公平性を確保していくことが重要である。
本日のセミナーのテーマは「低炭素社会に向けた産業界の役割」であるが、日本経団連とWBCSDが率先して地球温暖化対策における産業界の役割を議論することは心強い。セミナーの成功を祈念する。
バリ・アクションプランに基づき、ポスト京都議定書の国際枠組に関する交渉は08年末のCOP14における中間評価を経て、09年末のCOP15において妥結することが想定されており、短い期間に多くの課題を克服しなければならない。
ポスト京都議定書の国際枠組が機能するためには、経済との両立が不可欠であり、産業界は、交渉の現場に対して、セクトラル・アプローチ、技術移転、市場メカニズム、適応問題、土地利用、森林吸収等に関する具体的なインプットを行う必要がある。
温暖化は地球規模の問題であり、人類全体の課題でもある。よって、ポスト京都議定書の枠組を実効あるもとのするためには、すべての主要排出国が参加することが大前提である。
日本の産業界としては、京都議定書で約束した削減は自主行動計画を中心とする対策で達成するが、ポスト京都の議論においては、あらゆる手段について真摯に検討し、世界と手を携えて、かけがえのない地球を守っていく。