日本経団連は2月13日、東京・大手町の経団連会館で、イラン・イスラム共和国のラリジャニ司法権人権本部事務局長との懇談会を開催した。イラン側からはラリジャニ事務局長のほかアラグチ駐日イラン大使らが、また日本経団連からは、野村哲也日本イラン経済委員長らが出席した。国際問題・経済担当外務次官を務め、国会議員時代には外交委員会のメンバーとして活躍するなど、イランの外交、経済政策に通暁するラリジャニ事務局長は、イランのエネルギー政策や産業の民営化、日本企業の参画が有望な分野などについて説明した。ラリジャニ事務局長の発言要旨は次のとおり。
日本とイランとは、経済やその他の分野でもっと協力していくべきであるし、その潜在力もあるが、2国間の問題でなく外部要因によって、それが十分に活かされていない。今回の会合によって、この潜在力をもっと活かせるようになることを願っている。
はじめに、エネルギー政策を中心に説明したい。イランの国家エネルギー政策は国内部分と対外部分の2部構成になっており、このうち国内のエネルギー政策では、エネルギー源の分散、省エネルギー、環境汚染防止の3本柱を掲げている。
エネルギー源の分散については、石油、天然ガス、原子力、太陽、その他のエネルギーを広く活用していくため、政府は大規模な投資を行っている。
天然ガスの利用について、過去10年間のガソリンから天然ガスに移行するための投資によって、75%近くの家庭で消費エネルギーの80%以上を天然ガスが占めるようになった。また、パイプラインで欧州やインド、パキスタンに天然ガスを輸出する計画を進めている。
原子力に関しては、1年以内に500万以上の世帯がブシェールに建設中のイラン初の原子力発電所から電力供給を受けることを期待しており、現在、同原発では最終試験を行っている。
太陽エネルギーの開発も優先分野である。イランは太陽エネルギーに恵まれており、これに大々的な投資を行いたい。太陽エネルギーの経済性はまだ低いかもしれないが、環境面からは非常にクリーンで、イランの将来にとって重要なエネルギーになる。エネルギー源の分散化のすべての分野で日本企業が参画する機会がある。
省エネルギーは、われわれにとって重要な課題である。製油所、火力発電所から家庭の暖房に至る包括的な問題で、特定の分野に限定されるものではない。製油所の近代化や効率化も最終的には省エネルギーのひとつと見なすことができるし、イラン国内で製造される車の構造や暖房システムも含まれる。投資に適した素晴らしいマーケットであることから、政府は国内の民間企業の参入が容易になるよう資金的な支援を行うとともに、外国の民間企業も参入しやすくなるようにしたい。
環境汚染の防止対策として、工場や自動車、農村の暖房等を近代化し、環境上のニーズや義務に対応できるよう改善していかねばならない。汚染防止に対する意識や対応力を高めるため、国内の工場やさまざまな産業を対象に、今年だけでも20億ドルの予算を確保した。この取り組みは部分的には既に成功しており、今後も継続していきたい。
一方、対外的なエネルギー政策は、安全保障と安定性の2本の柱で構成されている。安全保障とは、イランの貿易相手国がイランにエネルギー資源を依存している場合、われわれはその安定した供給元として、きちんと供給義務を果たしていこうということだ。安定性についていえば、イランはOPEC加盟国であり、石油価格高騰のメリットを享受してはいるが、油価が乱高下するよりもマーケットの安定を望んでいる。
次に民営化の問題に言及する。民営化は痛みを伴うものの大変重要である。これまで政府が支配し、産業の中で「最大の聖域」とされている石油、製鉄、自動車の各分野について、政権中枢のすべての関係者から民営化の同意を取り付けたところである。石油化学プラント分野は既に民間に開放されており、国営企業よりうまく運営している民間企業もある。
日本企業はイランにおける長年の信頼と技術力の二つの面で優位にある。他国との競争においてもこの点を活かしてほしい。また、イランの円建て対日原油輸出代金をプロジェクトの資金調達に活用する仕組みも検討してはどうか。