東京・大手町の経団連会館で2月19日に開催された日本経団連理事会で、岸田文雄・消費者行政推進担当大臣が「消費者行政の当面の課題」をテーマに講演を行った。
冒頭、岸田大臣は、福田総理が先の施政方針演説で、消費者行政の総点検の重要性に言及したことを受けて今般、内閣官房に消費者行政推進会議を立ち上げ、消費者行政の一元化の議論を開始したことを説明した。
先般の中国製の冷凍食品の薬物混入事案については、食の安心・安全の課題を提起したと指摘、徹底的な原因究明とともに再発防止を進めたいと述べた。また、そのためには、政府の対応だけでは限りがあるので、経済界の協力を得て、生産者から消費者に至るシステム全体の中で食の安全を考えなければならないと指摘し、企業の理解と協力を求めた。
消費者行政の仕組みについては、情報の一元化と行政を束ねる司令塔の設置および司令塔に付与する権限について、経済界の理解と協力を得ながら検討を進めたいと述べた。
長らく消費者行政に携わってきた岸田大臣は、事業者に比べ情報量、交渉力、経済力において弱い立場にあった消費者は、行政が保護する対象であったが、2003年の消費者基本法の制定や、公益通報者保護制度と消費者団体保護制度の開始により、自立した存在としてとらえられるようになってきたとの認識を示した。また、企業は消費者・生活者の理解が得られなければ、その存続すらも危うくなることがあり、企業と消費者は共存共栄の関係を築かなければ、共に繁栄できないとの考え方が基本的に支持されるようになっているとの考え方に立って、消費者行政推進会議では、5月をめどに消費者行政の見直しの具体策をまとめたいと表明した。
情報の一元化についても、行政の立場ではなく、消費者の発した情報がどのように取り扱われているのかがわかるなど、国民の視点に立って、わかりやすい仕組みとすべきであるとの考えを示した。また、消費者行政の扱う範囲については、国民生活センターに寄せられる相談のうち食の安全に関するものが3割であり、残りはエレベーターなどの設備の安全、玩具などの生活用品の安全、振込詐欺、悪徳商法、多重債務問題、食品の偽装表示の問題など広範にわたっていることから、今後幅広いものとしたいと述べた。
最後に岸田大臣は、国民生活審議会や与野党が行っている議論を参考に、国民の関心に即して、適切に対応していきたいと述べ、改めて経済界や関係者への理解と協力を求めた。
なお、岸田大臣の講演を受けて、国民生活審議会の委員を務める池田弘一日本経団連評議員会副議長は、行政のあり方や考え方を消費者・生活者の目線に立って変えていくという福田総理の考えに賛同すると前置きし、議論に際しては、消費者と企業を対立的にとらえるべきではないと述べた。
また、消費者行政の役割は、自らの判断と責任において主体的に選択できる、自立的な消費者の育成と自由・公正・透明な市場の実現であると述べた。その上で、企業としても、企業倫理を確立し、社会的責任への取り組みを強化することで社会的な信頼を得るよう努力したいと述べた。
最後に、岸田大臣に対して、これまでの改革の流れに逆行することのないよう、消費者、企業双方にとってわかりやすく、簡素で効率的な消費者行政の推進にリーダーシップを発揮してほしいと述べた。