日本経団連は12月18日、提言「PFIの拡大に向け抜本的な改革を求める」を公表し、直ちに政府・与党に建議した。同提言は、PFI推進の今日的意義も踏まえ、その拡大に向けた制度改革の必要性と具体的方策を提示している。
提言の概要は次のとおり。
日本経団連では、PFI( private finance initiative )の円滑な推進に向け3次にわたり提言を取りまとめ(1998年9月、2002年6月、04年1月)、政府・与党に働き掛けを行ってきた。これに対して、政府・与党では二度にわたるPFI法改正(01年12月、05年8月)をはじめ、PFIの事業環境を改善する法制度の整備に努めてきた。
こうした中で、PFI法が施行された99年以来、8年間で約290件の案件が形成され、最近では、病院、刑務所といった超長期にわたる施設の運営を民間事業者が手掛ける運営重視型事業も実現している。
しかしながら、PFI法やガイドライン(運用指針)などの趣旨が現場に必ずしも浸透していないことに加え、PFIが一般競争入札になじまないという問題などもある。そのため、PFIは事業費ベースで公共事業費の3%程度にとどまっており、事業者は創意工夫を十分発揮できないことから、取り組み意欲も薄れてきている。
わが国では国・地方を通じた財政構造改革が急務になっている。また、地域活性化や利用者のニーズの多様化に対応した公共サービスの維持、質的向上といった課題などに対処するためにもPFIは有効な手段となり得る。
そこで、日本経団連では、PFIの拡大に向け中長期的な対応をも含む課題を改めて整理し、PFIを推進している英国の取り組みも参考としながら、具体的な改革の方向を提示している。
まず、PFIの入札から運営に至る各段階での運用面の課題を取り上げ、ガイドラインなどの改定などにより早急な解決を求めている。
具体的にはまず、「要求水準の明確化・定量化」である。これまで発注者が提示してきた要求水準は抽象的な事例も多いことから、事業者との対話を通じて業務内容が想定できるよう、具体的にサービスレベルを説明した要求水準を記載するよう求めている。
次に「発注者・事業者間の適正なリスク分担」である。これまでのPFIでは、発注者が事業者に対して、民間側の負担能力を超えるリスク負担をさせる事例もみられる。そこで、最適かつ公平なリスク管理の観点から、具体的かつ詳細なリスク分担事例を契約に盛り込むよう求めている。
また、「PFI事業者選定手続きの透明性の確保・向上」「債務負担行為の柔軟な変更」などを求めている。
加えて、中長期的な課題として、入札手続きに関する法制度の抜本的な改革の必要性を訴えている。まず「多段階選抜、競争的対話方式の本格的導入」である。PFIは性能発注であるため、発注者と事業者との交渉が不可欠である。しかし会計法、地方自治法、予算決算および会計令(予決令)の規定により、事業者と発注者との交渉は原則としてできないため、両者の考え方の違いを解消することが困難になっている。そこで、発注者と事業者が十分な意思疎通を行い、双方の負担を軽減しながら優良な事業者が絞り込まれていくという多段階選抜・競争的対話方式をPFI法や会計法、地方自治法に明確に位置付けることを求めている。
次に、「予定価格の柔軟な運用」である。例えば国の発注する事業は予定価格が公開されない。また、発注者の設定する予定価格を1円でも上回ると失格になる。しかし、発注者と事業者との対話が十分に行われていないため、事業者が発注者の設定する予定価格の範囲内にその提案を収めることは極めて難しい。そこで提言では、上限拘束性のない参考価格を提示するか、予定価格の算定根拠を明示する仕組みとするよう求めている。
加えて提言では、PFIの拡大に向けた発注者・事業者のサポート体制の整備などを求めている。具体的には、PFIを経験していない、もしくは経験の浅い発注者に対する総合的な支援体制の整備に加え、発注者・事業者間で発生した紛争を中立的に裁定するための機関の設置を求めている。