日本経団連は11月14日、東京・大手町の経団連会館で、中国の中華全国総工会代表団(団長=孫春蘭・総工会副主席、書記処第一書記、中国共産党中央委員)との懇談を行った。総工会は、中国の労働組合の全国組織で、連合との定期交流の中で訪日したもの。日本経団連側からは、草刈隆郎副会長、加藤丈夫労使関係委員長、立石信雄国際労働委員長らが出席した。
懇談ではまず、日本経団連側から草刈副会長が「日中国交正常化以来35年を経て、両国の各方面での交流は、飛躍的に拡大してきた。今後は『戦略的互恵関係』を構築するとともに、両国が協力してアジア、さらには世界の平和と安定に寄与することが求められている。日本においては、経済のグローバル化、少子・高齢化の進行などが経済社会に大きな影響を与えている。こうした状況に対して『人間尊重』を基軸とする日本型経営も、守るべきものは守り、変えるべきものは変革していくことが求められているが、どのような場合でも、経営において労使の健全なコミュニケーションが重要であることは変わりない」と述べた。
これに対して、総工会代表団一行8名を代表して孫副主席が「今や日中の年間貿易総額は2000億ドルを超えており、これは日本企業の積極的な投資の成果である。中国では経済と社会の調和の取れた発展を図ることが重要課題で、その基盤として、調和の取れた労使関係が不可欠である。労働者の利益を守るという労働組合の役割はますます大きくなっており、総工会は、安定した新しい労使関係の構築をめざしている」と述べた。
次いで、日本の労使関係について、加藤労使関係委員長が「現在の日本の労使関係は非常に安定している。近年、労使双方の共通課題として取り上げられているのは、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を定着させることである。これは、企業の中に働く者が育児や教育、老人介護、自己啓発などに取り組みやすい仕組みをつくることによって新しい働き方を創造し、労使双方にとってWin‐Winの関係をつくろうという取り組みである」と解説。さらに、立石国際労働委員長が、同委員会が昨年、中国人ホワイトカラー人材の確保と定着に関する人材戦略についての報告書を取りまとめたことを紹介。企業が取るべき対応策としては「現地社員が働きたいと感じる企業の魅力を構築し、発信すること。また、チームワークへの貢献を人事評価システムなどに反映し、現地社員に容易に受け入れられる仕組みをつくることも必要である」と述べた。
続いて意見交換に移り、日本経団連側から「中国進出先での工会(労働組合)設立についてどのようなことを考えるべきか」との質問があり、これに対して総工会側は「工会設立に当たっては、まず企業側の前向きな理解が不可欠である。工会がある企業の労働条件は、工会がない企業のそれを上回るという調査結果もあり、工会を設立して社員が経営に関心を持つことで、労使双方にプラスの効果をもたらしているようだ」と答えた。また、来年1月1日から施行される中国労働契約法について、日本経団連側から、「企業実務上ぜひ必要な施行細則はいつ公布されるのか」と質問があり、これに対し総工会側から「現在、労働・社会保障部において検討中であり、年内の公布をめざしている」との説明があった。