日本経団連観光委員会(大塚陸毅委員長)は10月15日、東京・大手町の経団連会館で韓国の総合経済団体である全国経済人連合会(全経連)観光産業特別委員会(朴三求副会長・委員長)と第2回日韓観光協力会議を開催した。会議では、2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博を目前に、日韓中の三国間交流を拡大するとともに、欧米などからの中国への旅行者を日本や韓国にも誘致するための協力方策に関して意見交換を行った。
同会議は、観光分野における日韓経済界の協力関係を強化することを通じて、北東アジアにおける経済連携を緊密化することを目的としており、昨年9月に韓国・ソウルで第1回会合が開催されている。
日本側からは御手洗冨士夫会長、佃和夫副会長、大塚観光委員長、本保芳明・国土交通省総合観光政策審議官など57名、韓国側からは朴三求副会長・観光産業特別委員長、李允鎬常勤副会長、姜基洪駐日韓国大使館韓国文化院院長など31名が参加した。さらに今回は、中国国家旅遊局から、範巨霊首席代表(東京)も参加、総勢89名が出席して、各業界の代表者が三国交流の推進に向けた具体的な課題を提起した。
開会に当たって大塚観光委員長は、地域活性化、生活空間の魅力創出、国際相互理解の促進といった国際観光振興が持つ意義と日韓中交流の現状を踏まえ、観光産業にかかわる事業者を支援しつつ北東アジアの繁栄と安定に寄与する方策を具体的に考えていきたい、とあいさつ。これに対し朴副会長が、日韓中三国で開催される国際イベントや羽田‐金浦‐虹橋を結ぶ航空路線の充実を契機とした三国観光プログラムの開発を提案し、北東アジア共同体への期待を述べた。さらに御手洗会長が、日本経団連と全経連が協力して日韓中三国間の連携強化に取り組んできたことに触れつつ、自身が日中国交正常化35周年を記念する「文化・スポーツ交流年」の実行委員長を務めていることを紹介した上で、今回の会議を通じて北東アジアにおける経済連携は一層強固なものになるとの考えを示した。
第1セッションでは、北東アジア観光ゾーン形成に向けた日韓経済界・日韓中政府の取り組みについて意見交換を実施。日本経団連の取り組みでは、昨年の第1回会議以来の活動として、観光立国推進基本法の成立やそれに基づく基本計画の策定に向けた働き掛け、今年3月のドバイへの調査ミッションの模様が紹介された。一方、全経連の取り組みとしては、日韓中観光協力会議への拡大をめざすことや、08年の「日韓観光交流年」に向けた活動が紹介された。
次に、日韓中三国の政府が、各国の観光政策を説明した。まず国交省は観光政策の推進体制や、観光立国推進基本計画について説明。韓国文化院は、日韓中の域内観光活性化を通じた北東アジア観光ゾーンに向けた、三国共同マーケティングや国際会議の開催を提案した。さらに中国国家旅遊局は、中国の観光産業発展の歩みや、観光政策の変遷について紹介した。
続く第2セッションでは、北京五輪や上海万博に向けた各業界の取り組みが説明され、(1)鉄道業界では、日韓が相互に連携して鉄道の旅をPRするほか、鉄道に関連した商品の開発・販売促進を行う。今後は日韓中鉄道観光協議体、ひいてはアジア全域を一つの観光ゾーンとする協議体をつくる。主要駅そのものが観光地になるよう取り組む(2)旅行業界では、北京五輪に来た観光客に日本や韓国に来てもらうため、欧米に対するプロモーションを日韓の政府観光局と連携して行う(3)航空業界では、羽田‐金浦、羽田‐虹橋、金浦‐虹橋など三国の大都市を結ぶ定期便やチャーター便の増便を図る。北京五輪や上海万博に向けて、日韓中を含む周遊運賃を検討する(4)ホテル業界では、ホテルにおける韓国語や中国語への対応に取り組むとともに、日韓で従業員の交流を進める(5)エンターテイメント業界では、映画などのエンターテイメント観覧を目的としたツアーを充実、エンターテイメントを通じた文化交流を拡大するとともに、多言語での情報提供システムなどのインフラ整備を推進する――などさまざまな提案がなされた。
セッション終了後、日本経団連と全経連が、観光分野で協力して取り組む事項をまとめた覚書を採択した。覚書の骨子は次のとおり。