日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は電力中央研究所と共同で9月25日、東京・大手町の経団連会館で、米国メリーランド大学名誉教授で2005年のノーベル経済学賞受賞者であるトーマス・シェリング氏による講演会「京都議定書後の温暖化対策将来枠組みのあり方について」を開催し、会員企業・団体、政府関係者等約250名が出席した。
当日はまず、加藤正進・電力中央研究所専務理事の開会あいさつの後、杉山大志・同研究所「温暖化防止政策の分析と提言」重点課題責任者から、ポスト京都議定書の将来枠組みに関する内外の議論動向について説明があった。続いてシェリング氏が温暖化対策の将来枠組みのあり方についての講演を行い、澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹(東京大学教授)が閉会のあいさつを述べた。
杉山氏からは、米国および豪州が離脱する等により参加国が限定されてしまった京都議定書の現状、アジア太平洋パートナーシップでの産業部門別の取り組みや米国が提唱する主要排出国会合など京都議定書後をにらんだ内外の議論動向等について説明があった。
また、杉山氏は、排出国すべてが参加する多様性のある枠組みが必要であると指摘し、さらに、日本は、途上国に対する省エネ制度の設計・実施の支援や、排出削減の手段である技術や製品を広く世界に供給することで温暖化防止に貢献するべきであり、それが日本の国益にもかなうと述べた。
シェリング氏は、ゲーム理論研究の第一人者として知られ地球温暖化問題についても積極的に発言している。同氏の講演要旨は次のとおり。
京都議定書によって地球温暖化問題への関心は高まったが、地球温暖化防止策としての効果はなかった。その理由として、(1)各国が自発的に温暖化対策に取り組むべきものとすべきであったにもかかわらず、制裁等によって実効性を担保しようとしてしまったこと(2)各国は、特定の政策の実施という行動ではなく、排出量の削減という結果を約束したものの、どのような政策を実施すれば排出量削減という結果につながるのかを理解している国はなかったこと(3)当時の技術水準に基づく短期の削減目標を掲げた結果、長期的な目標に焦点が当たらないようにさせてしまったこと――が挙げられる。
[email protected]$5$;$k$?$a$K$O!"e9q$G$"$j!"$=$l$KBP$9$k:G$bM-8z$JBP:v$O7P:QH/E8$G$"$k$3$H$+$i!"ES>e9q$N7P:QH/E8$rAK32$9$Y$-$G$O$J$$!#Bh;0$K!"5;=Q3+H/$O=EMW$G$"$j!"CmL¥$9$Y$-5;=Q$H$7$F$O!"#C#O2の回収・貯留技術(CCS)とジオ・エンジニアリング(大気上層部に物質を散布し太陽光を遮蔽し地球を冷却する技術)がある。天然資源が乏しい中で発展を遂げてきた日本は、技術開発で世界をリードする国であり、米国とパートナーシップを組んで50年後に必要となる技術開発を進めるべきである。
講演に続く質疑応答の中でシェリング氏から、すべての産業分野に排出枠を割り当てるような排出量取引制度を導入しようとすると、仕組みが複雑となり過ぎる、米国がまず排出削減を実行することが途上国の参加を促すために必要であるなどの発言があった。
講演後にシェリング氏は、米倉弘昌・日本経団連副会長、桝本晃章・東京電力顧問らとの懇談会(日本経団連主催)に出席し、温暖化問題への取り組みのあり方について活発な意見交換を行った。