日本経団連タイムス No.2877 (2007年9月27日)

日本ロシア経済委員会がブレマー・米国ユーラシア・グループ代表と懇談


日本ロシア経済委員会(安西邦夫委員長)は12日、都内のホテルで、世界の政治リスク分析に特化したコンサルティングを行う、米国ユーラシア・グループのイアン・ブレマー代表から、「転換期を迎えるロシア-グローバル・ビジネスの展望」について説明を聴いた。

■緊張が高まるロシアと欧米の関係

まず、ブレマー氏は、「領空侵犯問題などで緊張が高まるロシアとグルジアの関係、リトビネンコ氏不審死事件を発端に悪化する英ロ関係、チェコやポーランドへの米国のミサイル防衛システム配置計画における米ロ対立などを原因として、ロシアと欧米の関係は最悪の状態にある」と述べた。

さらに、「プーチン大統領は、ソ連崩壊後の民営化の過程を通じて欧米に奪われた資源開発の主導権を自国に取り戻そうとしており、この政策は国民の支持を集めている」との現状に触れた上で、「現在では、ロシアにおける反米感情は、中東における反米感情よりはるかに強い」と指摘した。

■国内投資の不足を背景に魅力が高まるロシア投資

その一方でブレマー氏は、「伝統的に関係が深いヨーロッパを除けば、ロシアを重要視する国・地域は減少している」ことから、「米国とロシアが新たな冷戦期に突入することはない」との肯定的な見解を示した。

また、「ロシアでは国内産業育成のために必要なインフラ整備が遅々として進んでいないにもかかわらず、ロシア企業は国内のインフラ投資に目を向けていない」と指摘し、「だからこそ、資源・エネルギー、希少金属、情報通信など政府が戦略的産業ととらえている分野ではなく、電力、ホテル、自動車、小売、医薬品といった分野のインフラ整備において、ビジネス・チャンスは非常に大きい」と述べ、ロシアが魅力的な投資先であると論じた。

加えて、「人口減少問題や極東・シベリア地域での中国系移民の大量流入問題を抱えるロシアにとって、中国に対する警戒感は強く、アジア地域での覇権をめざす中国との関係は、必要以上に緊密化しないだろう」との見通しを示し、「この微妙な中ロ関係が、ロシアから見たビジネス・パートナーとしての日本の存在感を高めている」と述べた。

■大統領選挙を迎えるロシアの政局を注視することが必要

また、来年3月に予定されている大統領選挙については、「プーチン大統領が指名した候補者が当選する」とした上で、「有力な後継者としては、イワノフ第一副首相がメドヴェージェフ第一副首相を一歩リードしているが、新たな候補者が現れる可能性もある」との見解を示した。また、「次期大統領誕生後も、プーチン氏は何らかの形で権力を掌握し続けるだろう」と述べるとともに、「ロシア・ビジネスを行う企業としては、次期大統領が権力を増大していくにつれ、プーチン氏との力関係がどのように変化するかを注視していくことが肝要である」と強調した。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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