日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で、産業問題委員会(齋藤宏共同委員長、西田厚聰共同委員長)を開催し、自由民主党外国人労働者等特別委員会の木村義雄委員長から、「外国人材受入れ問題に対する自民党の姿勢」について説明を聴くとともに、意見交換を行った。木村委員長の説明概要は次のとおり。
私は1986年の衆議院選初当選以来、社会保障問題にかかわってきたが、これからの高齢者介護の最大の問題は担い手の確保である。2年前、自民党の外国人労働者等特別委員会の委員長に就任する前後に、フランスとイギリスの介護現場でアフリカ等の外国人労働者なくしてはやっていけない現実を見て、雷に打たれたような思いがした。国内の介護現場でも若い職員が集まらないという実態を目の当たりにし、外国人受入れ促進の方向に舵を切る必要性を痛感した。自民党で外国人労働者の問題を取り上げると、なぜ外国人を受入れるのか、なぜ高齢者や女性、フリーターやニートの雇用を優先しないのかという議論が必ず出てくるが、そういう問題ではない。このような観点から、外国人労働者等特別委員会で会合を10回ほど開催して、ようやく「外国人労働者に関する方針」を取りまとめ、これまでの流れとは違った方向性を打ち出した。
しかし、先般の参議院選で自民党が過半数を割ってしまったことで、新たな問題が惹起した。外国人問題を議論するときに、法改正が必要となると、審議に時間を要したり、廃案になったりすることにもなりかねない。従って、何でも法改正という発想を転換し、いかに法改正をせずとも関係者の要望に応えられるかということに知恵を絞っていくことが、次の衆議院選までの間、いかに迅速に外国人問題への対応を進めていくかのカギになる。
産業界からは、求人募集をしても応募のない分野、企業の人材確保という点での研修・技能実習制度の役割が指摘されているが、現実にこうした現場は数多く存在しており、外国人によって賄われている。この現実を無視してきれい事で進めようとすれば、結果的に大きな経済的損失をもたらす。受入れ機関の適正化に関して、新規参入を妨げぬよう事前規制から事後チェックへの流れを進めてほしいという指摘ももっともである。ただし団体監理型の受入れ機関の中でも特に多業種が集まる協同組合には悪質なものもあるように聞いており、そういうものについては今後、厳しく規制せざるを得ないであろう。
研修生のうち早く技能レベルが上がった者については技能実習に移行させるべきという指摘はそのとおりであると思う。再技能実習の制度化は、法改正ではなく運用でできると厚生労働省も認めているので、早期に進めていきたい。産業界の希望は企業単独型、団体監理型を問わず優良認定を受けたところに認めてほしいということだが、先に企業単独型や団体監理型でも多業種ではなく優秀なところなどから進めるのが得策ではないかと思う。技能実習修了後、再技能実習までの期間は、せっかく磨き上げた腕前が落ちぬよう、できるだけ短くしていきたい。再技能実習修了後の就労も重要な問題であるが、この点は役所の抵抗が大きく、難しいところである。ある程度のリスクはつきものであり、どこまでリスクを許容し、それをヘッジするようなシステムをつくるかということに尽きる。
今回の参議院選で地方の格差が言われた。最大の問題点は企業などの大都市集中だが、企業が地方に立地しようにも、労働力がないと立地できない。地方が再生するためにも、外国人労働者を積極的に地方に取り込んでいくことが、ひとつの大きな切り口になると思う。これからの地方の再生、高齢化社会への対応を考えるとき、外国人労働者が貴重な役割を果たす。参議院選の結果によってその活用にブレーキがかからぬよう、知恵と工夫をもって未来を切り開いていきたい。