日本経団連(御手洗冨士夫会長)と経済広報センター(同)は18日、東京・大手町の経団連会館で、シンポジウム「道州制で日本を変える」を開催した。日本経団連は、今年3月に発表した提言「道州制の導入に向けた第1次提言」 <PDF> において、道州制導入に対する国民的な気運を高める活動を各地で展開していくことを表明しており、今回のシンポジウムは、その第1弾として開催された。シンポジウムでは、中村邦夫副会長・道州制推進委員長が開会あいさつを行い、御手洗会長の基調講演、林宜嗣・関西学院大学教授の特別講演に続いて、パネルディスカッションが行われた。会場には、日本経団連会員や経済広報センターの社会公聴会員、地方自治体関係者など、400名以上が集まった。
開会あいさつで中村副会長は、道州制の意義や目的などについて言及し、道州制は地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革を含む「究極の構造改革」を実現するものだと説明した。
続く基調講演で御手洗会長は、今の日本が活力を取り戻すことが最重要課題であると述べた上で、地域の人々の力を引き出すために、各地域が権限と責任を持って自らの地域を経営するという意識を持つことが重要だと指摘。自立した広域経済圏の創出をめざすために道州制の導入が必要であり、各道州がそれぞれの特色を生かして産学連携や産業政策を進めることで、各地域に世界的に通用する大企業が生まれて雇用も増え、日本全体が元気になると説明した。
次に、林宜嗣・関西学院大学教授が特別講演を行い、「産業は福祉の糧」という考えを紹介して、地域間格差を埋めるためには公共投資や交付金による事後的な再分配ではなく、各地域の魅力を高めて地域経済を活性化させることが重要だと述べた。続いて林教授は、戦略的に地域の中枢都市を育成したり、中枢都市と後背地域がともに発展するための広域的な交通・情報ネットワークを構築したりするためには、現在の都道府県単位では不十分だと指摘。広域的な経済再生戦略の必要性について言及するとともに、PFIなどの手法を用いて「国から地方へ」の分権とともに「官から民へ」の分権を進めることの重要性を強調した。
続いて行われたパネルディスカッションでは、杉浦正健・自由民主党道州制調査会会長がこれまでの中央集権体制の限界を指摘し、政治の主導により日本の姿を変えるべく取り組むと発言した。福田富一・栃木県知事は、道州制に対する全国知事会の意見がまとまっていないことに言及した上で、現行制度では抜本的な改革は困難だとの見解を示した。一方、西田睦美・日本経済新聞社論説委員は、政治主導と地方分権という二つの改革がある中で、道州制は地方分権の最終形だとしてメディアも情報提供を進めたいと述べた。池田弘一・日本経団連評議員会副議長・道州制推進委員会共同委員長は、自身の経験から地方の疲弊について言及し、地域がそれぞれ自立した上で自らの地域を活性化させることが重要であると指摘した。また、シンポジウム参加者のうち、上野賢一郎・衆議院議員・自民党道州制調査会事務局次長から、公務員制度改革が一つの突破口になるとの発言が、松浪健太・衆議院議員・自民党道州制調査会事務局次長から、道州制は政治改革・行政改革・日本人の考え方の改革という三つの改革を実現するものだとの発言がそれぞれあった。
最後に、中村副会長がシンポジウムの内容を総括し、閉会した。日本経団連では、このシンポジウムでの議論も踏まえながら、今後の道州制導入の具体化に向けてさらに検討を進めるとともに、名古屋や大分など、全国各地でシンポジウムを開催する予定である。