日本経団連は10日、東京・大手町の経団連会館で、知的財産委員会企画部会(加藤幹之部会長)を開催した。
会合では、政府の第3期科学技術基本計画の重点推進4分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)に関する分野別知的財産戦略について意見交換を行った。
分野別知的財産戦略は、知的財産戦略本部(本部長=安倍晋三内閣総理大臣)の「知的財産による競争力強化専門調査会」において検討を行うものであり、来年1月を目途として取りまとめる予定とされている。
企画部会においては、委員からの意見を基に、「ライフサイエンス分野」では、医師の行為には特許権の効力が及ばないことを前提とした医薬の高度な使用方法や先端医療技術の保護、リサーチツール特許の使用円滑化の実効性確保などについて、「情報通信分野」では、パテントトロール対策、オープンイノベーション時代の技術流出防止、国際標準化と知的財産戦略の一体化などについて、「環境分野」では、環境技術の海外展開のための環境整備(知的財産権の適切な保護や国際出願)や関連技術の国際標準化について、「ナノテク・材料分野」では、大学や独立行政法人の特許権の利用促進、関連技術の国際標準化などについて意見交換を行った。
部会委員からは、「特許制度ができた時には、今日のように一つの製品が何百何千の特許で成り立つような状況は想定していなかった。特許権の権利行使がどうあるべきかを検討すべきだ」「審査の国際的なハーモナイゼーションが必要である」「研究開発の成果について、日本でだけ特許を取得し、海外では取得しない場合、日本では許諾をとらなければならないのに、海外では自由に使えることになる。わが国の国際競争力を強化するためには、海外出願を促進することが必要ではないか」「産学官連携における不実施補償のあり方を検討すべき」などといった意見が出された。分野別知的財産戦略のあり方については、引き続き、企画部会で検討を進める予定である。
最後に、通常実施権の見直しについて意見交換を行った。現在、経済産業省・産業構造審議会の通常実施権等登録制度ワーキンググループ(WG)では、特許権に係る通常実施権の登録制度について、利用が進んでいない状況を踏まえ、その見直し方策について検討を進めている。
この日の企画部会では、同WGに参加している産業界委員から、WGでの検討状況について説明を受けるとともに、部会委員との意見交換を行った。
部会委員からは、「世界的にみて、ライセンス契約を結ぶ際、わが国のように登録しなければ法的保護を得られない制度を持つ国は少ない」「わが国の法制度の下では、契約があれば対抗できるようにすることは容易ではない。中期的なあり方の検討が必要ではないか」「通常実施権の登録制度の見直しとその企業活動への影響についても検討する必要があるのではないか」といった意見が出された。