日本経団連タイムス No.2872 (2007年8月23日)

中央最低賃金審議会が07年度地域別最賃額改定の目安答申

−使用者側、企業の支払い能力への配慮を強調


厚生労働省の中央最低賃金審議会(会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は10日、厚生労働大臣に対し、2007年度地域別最低賃金額改定の目安について答申した。答申は、今年度の目安について、その金額に関し労使の意見の隔たりが大きく、意見の一致をみるに至らなかったため、昨年同様目安に関する公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するというもの。公益委員見解における今年度の目安額は、7月13日の諮問に際し、「現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論(注)にも配意した」調査審議が求められたことに特段の配慮をし、Aランク19円、Bランク14円、Cランク9〜10円、Dランク6〜7円とするとした。なお、引き上げ額の全国加重平均は14円。

ランク都道府県金額
千葉、東京、神奈川、愛知、大阪19円
栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島14円
北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、
岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡
9〜10円
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、
長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
6〜7円

目安答申に当たっては、「目安に関する小委員会」において2回の徹夜審議を含む4回にわたる審議を行った。審議において使用者側委員は、日本経済は回復基調にあるものの、地域間、産業間、企業規模間、さらには同じ地域や産業の企業においても景況感・業況感にばらつきがみられるとともに、雇用環境を含む経済状況も地域によって異なると述べた。さらに、資本金1億円以上とそれ以外の企業の間で利益率の差が拡大していること、原材料価格が高騰し、仕入れ価格が上昇する一方で販売価格への転嫁が進まないことなどから、中小・零細企業の経営は厳しい状況にあることや倒産件数の増加も指摘した。さらに、目安審議の参考資料である賃金改定状況調査等において、賃金改定の凍結、引き下げの実施事業所の合計が半数を超えている状況にあり、こうした企業の支払い能力の実態に配慮が必要と強調。その上で、今年度の異例の諮問内容を踏まえることはやむを得ないとしても、今年度の目安は賃金改定状況調査の賃金上昇率の数値(A・B・Cランク=5円、Dランク=4円)をベースに議論すべきであり、大幅な引き上げは適当でないと主張していた。

一方、労働者側委員は、成長力底上げ戦略円卓会議における合意内容も重く受け止め、地域別最賃がセーフティネットとして機能を発揮できるようにしなければならないと主張。高卒初任給の水準あるいは一般労働者における平均賃金の50%の水準は時間給換算で900円を上回るものであることや、連合が試算する最低生計費の水準に見合う時間給は法定労働時間分で850円となることから、中長期的な引き上げを展望して、今年度については50円程度引き上げるべきであると主張していた。

今後、目安答申を参考に、各地方最低賃金審議会で改定審議が行われ、今年度の地域別最低賃金額が決定される予定。ただし、中央最低賃金審議会の諮問および答申が例年と比べて大幅に遅れたことから、例年10月1日の発効日も遅れる見込み。日本経団連は、目安審議に当たって、労使関係委員会や、地方経営者協会の最低賃金担当者で構成する最低賃金対策専門委員会で審議状況等を報告、対応について協議し、同審議会に推薦している使用者側委員の対応に反映させた。同委員は、社会的な視点を踏まえるとともに、厳しい経済環境の地域や中小・零細企業に配慮するという姿勢で対応した。

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【労政第一本部労政担当】
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