日本経団連(御手洗冨士夫会長)は17日、提言「宇宙新時代の幕開けと宇宙産業の国際競争力強化を目指して」を公表した。同提言では、わが国は40年間の宇宙開発利用への取り組みによって、衛星やロケットを開発・製造し、宇宙空間に打ち上げることができる能力を獲得するとともに、それらを活用して気象情報や災害情報等、国民生活に不可欠なインフラを提供していると述べている。
その上で、宇宙開発利用には文部科学省をはじめさまざまな省庁がかかわっているが、司令塔となる組織がないために各省庁の縦割り行政の弊害が生じ、宇宙関係予算も削減されるなど厳しい状況が続いていると指摘。欧米、中韓、インドなど諸外国では宇宙を国家政策の一環として推進しており、わが国も長期的・戦略的視点に立って進める必要があるとしている。
提言では、まず「重要性を増す宇宙開発利用」として、(1)地球温暖化対策や災害対策などのグローバル問題への対応(2)国会決議等に基づく、宇宙の安全保障への活用に対する制約の見直し(3)イノベーションの宝庫である宇宙産業の国際競争力の強化――の必要性を指摘し、これらの課題を解決するため、6月20日に国会に上程された「産業化」「安全保障」「研究開発」の3本柱をバランスよく、国家戦略として進めるための宇宙基本法案の早期成立を求めている。
次に「宇宙基本法への期待と今後の課題」では、宇宙基本法案に対して六つの意見を述べている。具体的には、(1)司令塔となる宇宙開発戦略本部について、宇宙政策を一元的に実施する組織とすること、産業界の意見を反映するための有識者会議を設置すること(2)国がユーザーとして衛星やロケットを長期的・安定的に調達するアンカーテナンシー(注)の仕組みをつくること(3)国産技術の確立による宇宙産業の国際競争力の強化のため1990年に締結した日米衛星調達合意を抜本的に見直すこと(4)宇宙開発戦略本部が今後策定する宇宙基本計画について、5年程度の中期的な衛星、ロケットの調達数・予算額を明示すること(5)宇宙航空研究開発機構等の宇宙開発機関は産業競争力の強化につながる研究開発の実施、安全保障に関する秘密保持をすること(6)付帯決議において実効性を担保すること――である。
最後に「2008年度予算編成の進め方」では、第3期科学技術基本計画における宇宙輸送システムと海洋地球観測探査システムという宇宙関係の国家基幹技術と戦略重点科学技術、骨太方針2007における治安・防災等への宇宙の活用等の指摘を踏まえ、円滑な各種プロジェクトの実施に向けて、現行の2500億円の予算を3000億円以上にすることを求めている。
提言では、このように宇宙開発利用を戦略的に推進することにより、国益増進・国民生活向上を実現する必要があると結論付けている。
(注)政府機関等が将来にわたる一定の需要を約束することにより民間による事業化を促す制度