日本経団連タイムス No.2866 (2007年7月5日)

報告書「地域経済の活性化を担う地元企業の役割」発表

−地元の資源で事業展開/コーディネート機能充実など指摘


日本経団連は6月19日、報告書「地域経済の活性化を担う地元企業の役割」を発表した。報告書は、地域経済をめぐる環境が変化する中、地域経済活性化のため、経済活動の主たる担い手である地元企業が果たすべき役割を提示することを目的とするものである。同報告書の概要は次のとおり。

激変する地域経済をめぐる環境

地域経済をめぐる環境は、(1)経済のグローバル化に伴う産業立地の地域間競争の激化(2)公共事業依存などの従来型の発展モデルからの転換の必要性(3)人口減少・高齢化に伴う地域経済活動に対する先行き懸念の増大――など厳しさを増している。

地域経済はそれぞれに多様な課題を抱えており、その打開策も一様ではない。また、地域の活動を支える主体はさまざまであるが、報告書では地域経済の主たる担い手である地元企業の役割に注目した。

地域経済活性化のために期待される地元企業の役割

地域経済の活性化においては、そこに生活し、拠点を据えて活動している企業・経営者が、地域経済発展の担い手として活躍することが求められる。特に地元で事業を続けてきた経営者の知恵とノウハウは、地域経済全体を活性化させるためにも有用である場合が多い。製造業・非製造業を問わず、地元にある資源を希少価値のあるものととらえた上で、地元企業はこれらを競争力の源泉として活用しつつ事業を展開していくことが求められる。さらに、地域全体として、地域外からヒト・カネ・モノなどの経営資源を引き入れていくことを、透徹した戦略をもって実施していくという発想が必要である。

地域コーディネーターの必要性

地域経済を活性化させていくためには、(1)地域内協力体制の強化とネットワークの構築(2)地域資源の発掘と活用(3)「地域ブランド」の構築と定着の推進(4)流通・販売システムの改革(5)文化的イベントの活用(6)ICT(情報通信技術)の活用(7)産学官連携の推進(8)企業間連携の推進――などの施策を実現していくことが考えられる。その実現のためには、個々の企業や諸機関との連携を円滑に進め、地域をひとつにまとめてその力を最大限に引き出していくという「触媒の機能」としての「コーディネート機能」の展開・充実がカギとなる。

地域コーディネーターになり得る人材はさまざまな分野に存在するが、中でも、企業活動に精通した人材(企業のOB、企業活動をよく理解している経済団体、支援団体、地方自治体の職員など)が、有力な候補である。地域の企業経営者においては、地域コーディネーターの重要性をよく認識し、有用な人材の発掘・育成といった積極的な人的貢献が求められる。

人を引き付ける地域づくり

富=付加価値を生み出す主体である地域の企業が活力を得て発展していくことは、地域が自信を取り戻すことに直結する。地域の資源を活用し、域外市場からも必要な資源を取り込み、元気な企業・人々が活動している地域に、人々は引き付けられる。豊富な経験と技術・ノウハウを持つ企業の経営者がそのような視点を持ち、地域経済全体の活動に参画していくことが必要である。その上で、それを支えるようなソフト面、ハード面でのインフラを、企業経営者のみならず地方自治体、経済団体、支援団体、大学、研究機関などが協力しつつ整えていくことが、今後の地域経済の活性化施策の方向性である。

【労政第一本部企画担当】
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