日本経団連タイムス No.2866 (2007年7月5日)

オン・ケン・ヨンASEAN事務総長と意見交換

−オン事務局長、ASEAN経済統合で説明


日本経団連は6月14日、東京・大手町の経団連会館で、オン・ケン・ヨンASEAN事務総長との意見交換会を開催した。日本経団連からは、島上清明経済連携推進委員会企画部会長、大川三千男アジア・大洋州地域委員会企画部会長をはじめ両委員会の主要委員が出席、「ASEANの投資環境構想」やASEAN経済共同体(AEC)への道筋などについて、活発な意見交換を行った。

意見交換会では、まず、経済産業省通商政策局の西山圭太アジア大洋州課長から、同省がASEAN事務局とともに取り組んでいる「ASEAN共通投資環境構想」について説明が行われた。同構想は、投資判断を実際に行っている投資家とASEAN政策当局間の対話のチャネルを開くことにより、緊密かつ継続的な意思疎通を可能とし、日ASEAN間の対話強化を図るものである。

次に、オン事務総長からASEAN経済統合に向けたさまざまな取り組みについて説明が行われた。オン事務総長は、2015年の経済統合に向けてASEAN各国が達成すべき内容として、単一市場と生産拠点、競争力のある経済地域、均等な経済発展、グローバル経済への統合、という4点を挙げ、詳細に紹介した。

ASEANの投資環境については、05年の対ASEAN直接投資総額が過去最高を記録したものの、既存投資家による再投資の割合が大半を占めているため、新規投資を増やすべく投資環境改善に努めなければいけないとした。この一環として、日本企業も恩恵にあずかれるように、通関手続き簡素化やASEAN投資地域(AIA)関連協定の改定などに取り組む方針を示した。さらに、サービスセクターへの投資が直接投資総額の半分以上を占めている点に触れ、同セクターを対象としたインセンティブも検討していく必要があるとした。

こうした説明を受け島上部会長は、ASEAN地域には日本からの投資を専ら生産・輸出拠点を形成するためのものと捉える傾向が強かったが、オン事務総長の提案は包括的な投資環境整備をめざしており、賛同できると応えた。さらに、投資誘致に当たっては、流通・サービス・エンジニアリング等の分野における自由化が重要で、競争力強化の観点から、製造業関連サービス、ロジスティックス、販売、メンテナンスサービスなどの投資の自由化を進めるとともに、技術者の育成、社会インフラの整備、法執行の透明性の向上などが重要であるとコメントした。

一方、大川部会長が、「ASEANは今後どのような方針でFTA(自由貿易協定)に取り組むのか」と質問したところ、オン事務総長は、多国間貿易体制の中心であるWTO体制から逸脱しようとする圧力が常にある中、地域プログラムを確実に実行していくことが基本方針であるとし、AECを基本とした体制の下、FTAに取り組んでいきたいと述べた。また、ASEAN域内における国際的な生産ネットワークを活かし、世界で対等に競争する上でもAECは重要な役割を果たすとした。

その他、日本経団連側参加者が、この時期に「ASEAN共通投資環境構想」を実行するに至った経緯や目的を質問したところ、オン事務総長は、国際競争が一層激化する中でASEAN各国がそれぞれ個別に競争していたのではビジネスを誘致することはできないが、ASEAN10カ国が1つにまとまれば機会を最大化できると答えた。

さらに、他の参加者から、中国とASEANとの間のFTAなどでは、第三国を経由した仲介貿易が認められず、FTAの恩恵を享受できないケースがある事実を指摘し、今後、ASEANと中国の間で運用面での改善を図るよう申し入れたところ、オン事務総長は、こうしたFTAの運用面での問題は、今後重要になっていくため、今回の要望を機に関係省庁などに積極的に働き掛けていきたいと述べた。

【国際第二本部経済連携担当】
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