日本経団連の御手洗冨士夫会長は6月28日、東京・渋谷の公共職業安定所(ハローワーク)や事業所内託児所「カンガルーム汐留」、東京都認証保育所「キッズプラザアスク晴海園」の3箇所を視察し、求職活動を行っている若者や保育所の利用者と意見交換を行った。保育所の視察には、石原慎太郎東京都知事も同行した。その後、山本有二内閣府特命担当大臣(再チャレンジ担当)と若年者の雇用対策について意見交換を行った。
御手洗会長は、今回の視察を就任2年目の重要課題に掲げている「若年者雇用対策」「子育て支援」への取り組みの一環として、今後の政策提言に反映していきたいとしている。
ハローワークを訪問した御手洗会長は、大槻勝啓東京労働局長、福島孝東京労働局職業安定部長、村上克己渋谷公共職業安定所長から、職業安定所の果たしている役割と若年者の就職状況などについて説明を受けた後、職業相談窓口などを視察し、実際に求職活動を行っている求職者と意見交換を実施、就職活動における悩みや、ハローワークへの要望などを直接聴いた。
続いて訪問した資生堂が運営する事業所内託児所「カンガルーム汐留」では、前田新造資生堂社長らと懇談した後、託児所を視察。子どもを預けている利用者から、働きながら子育てをする上での苦労話や今後の保育サービスへの要望などについて話を聴いた。
視察後、内閣府の山本再チャレンジ相と懇談した御手洗会長はまず、ハローワーク視察について「若者が意欲を持って求職活動に臨んでいることを実感できた」と感想を述べるとともに、若年者雇用対策については社会総掛かりでの取り組みが必要と強調、就職氷河期に思うように就職できなかった若者について、能力を向上する機会を提供できるよう官民一体で取り組む必要があると述べ、「ジョブ・カード」をはじめとする政府の取り組みへの期待を示した。また、ワーク・ライフ・バランスの取り組みが非常に重要であるとして、世の中全体として、働きたい時に本人が望むかたちで働けるような仕組みの導入が必要であると述べた。
これに対し山本再チャレンジ相は、「ジョブ・カード」は若者の再就職へのパスポートとして大きな役割を果たすと語った。また、行政による職業紹介には限界もあり、多様な人々の多様なニーズに応えるためのアウトリーチ型(支援対象者の元にハローワークが出かけていく)の相談体制も1つの方策になるとの考えを示した。さらに、育児の問題については、保育所設置の重要性とともに、在宅保育の必要性についても言及した。
視察を終えた御手洗会長は、「実際に現場を視察して、現場が教えてくれることがいかに多いかを実感した」と記者を前に感想を述べた。その上で、政府に対して、若年者の能力開発や専門性を付与するためのシステム、各人のニーズにきめ細かく対応できる相談体制の充実などが必要であると訴えるとともに、受け入れる企業としても、例えば、年齢にかかわらず仕事によって賃金が決まるような仕組みの構築など、官民一体となったインフラ整備が必要であると述べた。