日本経団連(御手洗冨士夫会長)は12日、提言「日EU経済連携協定に関する共同研究の開始を求める」を公表した。わが国と欧州との良好な経済関係が相互の無関心につながることがないよう、新たな日欧経済関係の構築が必要である。他方、わが国とASEAN各国との二国間の経済連携協定(EPA)についてはおおむね形が整ってきたが、諸外国の動向を踏まえれば、引き続きEPAの締結を積極的に推進していく必要がある。同提言はこのような中、取りまとめられたものである。
提言ではまず、わが国がEPAを推進するに当たって、東アジア諸国、資源・エネルギー・食料供給国に加えて、(1)わが国にとって重要な輸出先、投資先となっている、あるいはわが国からの輸出や投資に対し高い障壁を設けているなど、EPAの締結によって貿易・投資の拡大・円滑化が期待できる国・地域(2)特にわが国と競争関係にある産業分野を多く有する国が既に自由貿易協定(FTA)を締結済みか、締結に向けて交渉中の国・地域(3)わが国と共通の価値観を有している、あるいは、わが国の総合的な安全保障を確保する上で重要な国・地域など、政治・安全保障上の配慮から関係の維持・強化が求められる国・地域――を優先的に交渉すべき相手先として勘案する必要があるとしている。
その上で、EUは、(1)わが国にとって米国に次ぐ輸出先、直接投資先であり、また、家電、乗用車などに対する高関税を維持していること(2)わが国と競争関係にある産業分野を多く有する韓国と5月にFTA交渉を開始したこと(3)さらに、民主主義、法の支配、市場経済といった基本的な価値観をわが国と共有していること――から、EPAの優先交渉相手にふさわしいパートナーであると位置付け、産学官の共同研究を早急に開始すべきであると提言している。
提言では、わが国経済界の立場から「EUとのEPAに期待される効果」として、(1)関税の撤廃等=EUは乗用車(10%)、家電(最高14%)などに対する高関税を維持。また、多機能化された製品等をITA(情報技術協定)の対象から外し、関税を賦課する動きあり(2)投資・ビジネス環境の整備=例えば企業内転勤に伴う滞在労働許可手続きが改善されれば、日系企業の従業員の円滑で計画的な採用や配置転換が容易に。日EU双方の制度等について官民協議の枠組みを確立(3)知的財産権の保護=模倣品・海賊版の取り締まりや罰則強化など実効的なエンフォースメントを確保。第三国における模倣品・海賊版対策に関し協力(4)電子商取引の推進=デジタル・コンテンツへの関税不賦課等を通じコンテンツ・ビジネス等を振興(5)紛争解決の仕組みの確立=各加盟国の国内法がEU指令を適切に反映していないことが原因で生じる紛争等を解決するための仕組みを確立――を掲げている。さらに、経済活動にかかわる日EUそれぞれのルール・制度の整備・改善やそれらの日EU間での調和を進めることが重要と付言している。
また、「EUとのEPAを推進する上で配慮すべき事項」として、(1)世界経済の4割を占める日EUがEPAを締結することのマイナスの影響を懸念する向きもあることから、先進国同士にふさわしい包括的かつ質の高いEPAを締結する必要があること(2)競争力を持った健全な国内農業の確立との両立が最大の課題であり、国内における農業構造改革の着実な推進とその加速化および食品加工品など農産品の取り扱いに対する配慮が必要であること――を挙げている。