日本経団連の御手洗冨士夫会長は15日、従業員から年金記録の漏れなどについて問い合わせがあった場合に、関係情報を提供するなどの対応を迅速に行うよう、会員企業に要請状を送った。
国民年金・厚生年金の加入記録は、原則20歳以上の国民1人ひとりが1つずつ持っている「基礎年金番号」で統一して管理されている。ところが、同番号が導入された1997年以前は、会社が変わったり、結婚して姓が変わったりした場合に、「年金手帳記号番号」が新たに付される場合があった。このため導入直前にはこの記号番号が約3億件に達し、基礎年金番号を付番された人数の約1億人を大幅に上回っていた。残りの約2億件の統合が必要とされ、その作業が続けられてきたが、現在でも約5000万件が統合されていない。
政府は、この未統合記録の名寄せ作業を1年以内に完了することや、総務省・都道府県に置かれる年金記録の判定のための「第三者委員会」を総務省に設置して、記録が消えたとされるケースについて調査を行うなどとした対策を発表している。
こうした動きを受けて、日本経団連では、11日に開催された会長・副会長会議で、年金記録問題は官民が協力して早期に解決すべきであるとの考えで一致し、会員に対して、民の支援の形として、次の4点の協力を要請した。
1つは、元あるいは現従業員から自身の年金加入記録の漏れなどに関する問い合わせがあった場合、誠実かつ迅速に対応することや、必要がある場合には問い合わせ窓口を設置することを要請している。
2つは、「第三者委員会」から問い合わせがあれば、社内に残っている利用可能な資料を活用し、説明するなどの対応を求めている。
3つは、厚生年金保険制度全般について従業員へ啓蒙・周知すること。特に、従業員が退職した時に国民年金への切り換えが必要となる場合があり、手続きを迅速に行わないと加入漏れとなり得るので、企業からも情報提供などをしてほしいと呼び掛けている。
4つには、子会社、関連会社をはじめとして関係する中小企業では、知識も十分にない場合があり、資料の調査の仕方や厚生年金保険制度の情報提供等に関し協力要請があれば、最大限、支援してほしいとしている。
御手洗会長は、このほかに、社会保険庁から名寄せなどの実務に詳しい民間スタッフの派遣要請があれば検討すると表明しており、今後、具体化を図っていくことにしている。