日本経団連タイムス No.2859 (2007年5月17日)

提言「今後の賃金制度における基本的な考え方」公表

−従業員のモチベーション高める賃金制度の構築へ


日本経団連は15日、「今後の賃金制度における基本的な考え方〜従業員のモチベーションを高める賃金制度の構築に向けて〜」と題する提言を取りまとめ、公表した。
同提言は、今後の賃金制度の望ましい基軸についての基本的な考え方を整理し、その方向性を示したもの。従業員のモチベーション向上や再チャレンジ促進の視点も入れつつ、企業が激変する経営環境に対応するためには、年功型賃金から仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金とすることが望ましいとしている。
既に多くの先進的企業では見直しを行っている一方で、年功型賃金制度や年功的な運用を行っている企業も少なくないことから、改めて問題提起を行ったもの。

1.「賃金」に関する考え方の整理

一般的に賃金は、「労働の対価」といわれているが、実際には、労働市場における「需給関係」、企業の「支払能力」、従業員の「生計費」などのほか、人材の確保と定着、従業員のモチベーションの維持・向上、労使関係といったさまざまな要素を総合的に勘案の上、決定されている。その結果、日本においては多くの企業が、年功型賃金を採用してきたが、近年の著しい環境変化が生じている中で、長期雇用を維持するためにも、年功型賃金は変容を迫られている。

2.経営環境の変化と課題

  1. ビジネスモデルの変化の速さやグローバル経済化の進展などによって、企業間競争が激化する中で、企業の競争力を維持・強化し、雇用を維持・創出していくためには、担っている仕事と賃金、労働時間の関係を改めて考えることが必要となっている。
  2. 希望の国の実現には、意欲と能力のある若年者の就労を促進する必要があり、わが国の発展に向けては、生産性の低い分野から高い分野への円滑な労働移動が求められている。中途採用者と在籍従業員との賃金の公正性が図られ、かつ、だれに対しても公平にチャレンジする機会が開かれる制度の構築が必要となっている。
  3. 日本では、総人口の減少と15〜64歳の生産年齢人口の減少が同時に進行しており、女性、高齢者、外国人などをより一層活用することが必要となっている。多様な人材が不利とならず、モチベーションを高める公正で納得性の高い賃金制度が求められている。
  4. 「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」の実現に向けた社内の制度整備などによって、雇用形態や就労形態の多様化が進展している。従業員間の納得性を高められるよう、将来にわたる活用の仕方、担っている仕事や役割などを軸にした公正な賃金をめざすことが重要となっている。
  5. ICTの発展・普及などによって、仕事の内容や価値が大きく変化している。仕事と賃金の乖離が生じているものについては、年齢・勤続年数を軸とした賃金制度を改めることが必要となっている。

3.今後の賃金制度で基軸とすべきもの

このような背景を踏まえると、今後の賃金制度においては、年齢や勤続年数に偏重した賃金制度から、従業員のモチベーション向上と再チャレンジ促進に資する「仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度」とすることが望ましい。
自社に最も適した形で、仕事・役割・貢献度を基軸にした賃金制度の構築に向けた検討がなされるとともに、既に導入している企業においては、よりよい制度とすべく、労使の話し合いのさらなる深化を期待したい。

【労政第一本部労政担当】
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