日本経団連は4月12日と13日の2日間、都内で韓国経営者総協会(韓国経総)から金榮培副会長兼事務総長ら6名の参加を得て、事務局交流会議を開催した。
同交流会議は、2001年5月の奥田碩日経連会長(当時)と金昌星韓国経総会長(当時)との合意に基づくもの。日本と韓国を交互に訪問しており、今回はその6回目となる。また、日本経団連の岡村正副会長が金副会長らの表敬を受けた。
会議は、両国の労働経済事情、日韓双方で関心の高いワーク・ライフ・バランス、および賃金の水準・システムという3つのテーマについて、双方から自国の現状をそれぞれ説明した後、討議を行った。また、日本経団連は、韓国経総からの要望に応えて日本の労働法改正の現状について説明を行った。
日本経団連側は、日本では、07年度も実質GDP成長率が2.0%と持続的な経済成長が予想され、この成長は(1)好調な輸出(2)企業体質の改善――によるものであると分析した上で、好調な企業収益を下方硬直性のある「賃金」に安易に反映することはできないとの見解を示した。また、日本社会が直面する少子化・高齢化の問題について、労働力人口の減少や消費の減少および地域社会の活力低下といった経済・社会に及ぼす悪影響などを説明した。
また、ワーク・ライフ・バランスに関して、企業事例を交えながら、この3月に日本経団連が公表した提言「少子化問題への総合的な対応を求める」について、企業として少子化への取り組みを加速している中で、税制上の支援措置とともに、柔軟な働き方の整備や仕事と生活の両立支援に資する法整備の必要性など、その内容を紹介した。
一方韓国経総側は、韓国の労働経済事情について、(1)自営業者の比率が高い(29.5%と日本の約3倍)(2)若年失業率が高い(15〜29歳若年者失業率は約7.8%と全体平均の2倍以上)(3)1987年〜2005年の平均値として生産性の上昇を上回る賃上げを行ってきた――という3つの特徴を紹介した。とりわけ賃金に関しては、韓国の製造業の賃金上昇率が97年から8年間で92.1%にも達したとの統計データを示し、これは大企業の組合活動の活発化や企業間競争による大卒初任給の引き上げなどが主な原因であると分析しながら、持続的な成長と雇用の安定を図るためには、賃上げよりも雇用の創出を優先すべきであると主張した。
また、ワーク・ライフ・バランスに関しては、韓国政府が打ち出した、すべての世代が共に暮らす持続発展可能な社会をめざす内容の「Vision2030」をはじめ、従業員向けに専門のカウンセラーによる職場や家庭の生活改善相談を行う企業内相談所の設置など、この分野における韓国企業の取り組みも紹介した。
質疑応答では、特に大卒の初任給をめぐって、韓国経総側から、その水準が企業イメージに直結する韓国社会の実情を踏まえ、「日本ではなぜ大企業と中小企業との間にそれほどの差がないのか」といった質問が出され、両国の賃金制度の相違点などについて活発な意見交換を行った。
会議の最後にあいさつした金副会長は、この交流会議が両国の労働経済に関する相互理解を図る上で大変有意義なものであると述べ、今後は経済全般をテーマにして交流を深めていきたいと語った。
交流会議の後、韓国経総訪日団は資生堂と松下電器産業を訪問し、両社のワーク・ライフ・バランスに関する先進的な取り組みを聴取するとともに、関連施設を見学した。