日本経団連の情報通信委員会(榊原定征共同委員長、石原邦夫共同委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で、EU委員会のビビアン・レディング情報社会・メディア担当委員(大臣に相当)との懇談会を開催した。当日は、レディング委員から、「EUの今後の通信・放送政策のあり方」と題して、EUの情報通信分野における改革に向けた取り組みと今後の戦略について広範な説明を聴くとともに、意見交換を行った。
EUでは、2010年までに世界で最も競争力のある知識経済を実現することを目標とした「リスボン戦略」に基づき、情報通信技術の積極活用を図り、また、より望ましい規制のあり方の検討や、通信・放送関連法の見直しを進めている。
冒頭、レディング委員は、情報通信産業はそれ自体が産業であると同時に、他の産業にあまねく影響を与えるものであり、また、情報通信技術は生産性向上、成長、雇用創出の強力な要因であると述べた。
同委員は、EUの通信事業者は次世代ネットワークを構築する計画を発表しているが、日本に比べてその進捗状況は遅れていると指摘。競争は投資を阻害するものではなく、促進するものであると述べた上で、競争ベースで次世代ネットワークを構築するべきであると強調した。また、競争を促進するためには、英国のブリティッシュ・テレコムの例のように、独占的な大手通信事業者が有する基幹網とボトルネックとなっているアクセス網を、機能分離することも有効な手段であると述べた。
EU内での周波数利用のあり方については、一部の周波数帯域は各国の専用とするが、特定の帯域についてはEU全域で使えるようにすることが、携帯事業者などサービス提供者と利用者双方にとって望ましいと述べた。また、現在、事業者の描くビジネスモデルと購入した周波数帯域が合致しない場合、事業者は購入した高価な帯域に合わせてビジネスモデルを変更せざるを得ない。これについて同委員は、ビジネスモデルに合わせて帯域を変えることができないのは非合理的であると指摘した上で、EU内での周波数取引制度を提案していると説明した。
研究開発については、「情報通信技術は、高齢化等、日本とEUに共通の課題に対応したサービスを提供するために不可欠であり、両者間で研究開発に関する協力体制を築くべきである」と述べ、今年末の「日EU・ICT研究協力フォーラム」開催構想を明らかにした。
続く意見交換では、日本側から、「インターネットの普及に伴い、インターネットのガバナンスが重要になってきており、日本とEUが協力して取り組むべき」との意見が出された。これに対し同委員は、インターネットの自由と安全の両方を確保することが必要であると述べるとともに、日本経団連がこの問題に関して積極的に活動していることを高く評価した。
また、「日本では、政府が世界最先端の電子行政の実現をめざした取り組みを進めているが、利用者にとって使いやすい制度になっていない」との意見に対しては、政府や官僚組織そのものが電子行政の導入を阻害することがあるが、利用者が使いやすい簡素な制度を構築し、本当の意味での電子行政を実現するべきとの見解を示した。
最後に、同委員は、今後も急速に進化する情報通信分野においても、日本とEUが協力してグローバルな課題に取り組むことが不可欠であると強調して締めくくった。