日本経団連は3月20日、東京・大手町の経団連会館で、シンガポール共和国のリー・シェンロン首相との懇談会を開催、御手洗冨士夫会長がリー首相と面会するとともに、米倉弘昌副会長をはじめとする日本経団連首脳が、今般改正された日シンガポール経済連携協定(EPA)や両国間の経済問題全般をめぐって意見交換を行った。
両国間には、2002年11月、わが国にとって初めてのEPAとなる日シンガポールEPAが発効している。その後、協定上改善すべき点について見直し交渉が行われた結果、今年1月に大筋合意に至り、3月19日、両国首脳間でEPA改正議定書が署名された。
日シンガポールEPAは、両国間の貿易、投資、サービス等の自由な移動を促進するとともに、各種協力を含む包括的な経済連携をめざすものであり、協定改正によって、両国間の経済関係がさらに緊密化していくことが期待されている。
リー首相は、これに加え、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)全体との間で交渉中の日ASEAN・EPAの早期締結が非常に重要な課題であると強調した。また、東アジアサミット参加国に対して、日本は積極的に協力してほしいと期待を表明した。
さらにリー首相は、外資誘致に向けたシンガポールの取り組みを紹介。「シンガポールは07年度予算より、現行の法人税率20%をさらに2%引き下げ、企業にとって有利な税制を整備する」、また「経済協力開発機構(OECD)加盟国の水準に遜色ない研究開発支出(対GDP比3%)を行うなど、イノベーションや起業化を推進する」と説明した。
懇談において、岡村正副会長がシンガポールにおける外国人労働者受け入れ政策につき質問したところ、リー首相からは、労働力受け入れに当たって、国全体の経済水準がどれだけ向上するか、シンガポール社会にどの程度溶け込めるかなどを重要な判断基準としているとの説明があった。この基準に基づき、未熟練労働者については、就労は認めるが長期滞在は認めない一方、熟練労働者や専門職は積極的に受け入れ、長期滞在や帰化を奨励していると述べた。
さらに、シンガポールが真に国際的な都市国家として発展していくためには、特定国に偏ることなく多様な国々から人材を受け入れていくことが重要であるとの説明があった。
他方、和田紀夫副会長が、シンガポールの次世代ブロードバンドネットワーク計画の推進につき言及したところ、リー首相から、ブロードバンドのインフラを全世帯に提供するとともに、公衆無線による接続も充実させることにより、シンガポールの比較優位を形成したいという決意が表明された。
さらに、渡文明副会長が、重要なシーレーンであるマラッカ海峡の安全確保対策について質問。これに対して、リー首相は、マラッカ海峡における海賊行為を取り締まるためには、日本をはじめ14カ国で構成する「アジア海賊対策地域協力」の枠組みの下、沿岸諸国と海峡利用者が協力していくことが不可欠であると述べた。
こうした活発な意見交換を受け、最後に米倉副会長が、両国のさらなる経済関係強化に向けた期待を表明した。