日本経団連(御手洗冨士夫会長)は3月28日、「道州制の導入に向けた第1次提言―究極の構造改革を目指して―」<PDF>と題する提言を公表した。道州制の導入は、今年元旦に発表した新ビジョン「希望の国、日本」でも優先課題として提案しているが、同提言では改めて、現在の日本が抱えているさまざまな課題を国・地方を通じて解決し、地域の自立・活性化と発展により、日本の国際競争力強化を図るため、道州制の導入が不可欠であると主張している。同提言は、昨年11月以来、行政改革推進委員会の下に設置した「道州制に関する検討会」において進めてきた検討の成果を取りまとめたものであり、道州制導入の意義や目的、道州制の導入によって目指すべき新しい国の姿など、道州制の導入に関する日本経団連としての基本的な考え方を示している。概要は以下のとおり。
第1次地方分権改革や三位一体改革により、国から地方への権限・財源の移譲や補助金改革、交付税の見直しが行われた。しかし、改革は不十分であり、地方の自立や主体性の確立という観点から、課題は山積している。
道州制の導入は、統治機構の見直しを通じて、政策立案および遂行能力を向上させる意義がある。中央集権体制から地域自立体制へ移行し、広域自治体である道州が独自性を発揮して、真に自立した地域となることが重要である。
また、道州が自らの地域を経営し、その結果責任を負うという「地域経営」の視点を持ち、競争を通じて発展を目指すことで、地域経済が活性化し、日本経済全体の活力も増大する。
さらに、国と地方を通じて官の役割を必要最小限にとどめ、国・地方・地域コミュニティーの間で、適切な役割分担を行うことで、官は残された役割の遂行に持てる資源を適切に集中することが可能となり、行政サービスの質的向上が実現することになる。
このような意義を持つ道州制を本格的に導入することによって、日本の姿は大きく変わると考えられる。第1に、個性ある地域づくりが行われ、分散型国土・経済構造の形成により国際競争力が向上する。この過程では、地域経済が全体的に底上げされ、地域間格差の是正も期待できる。第2に、官と民、国と地方の役割が再構築されるほか、地域コミュニティーの活用が進む。ここでは、国の役割が必要最小限のものに限定され、補完性の原理に基づき、より住民に近い行政サービスは基礎自治体が、広域的な施策の企画・立案・展開は道州が担うこととなる。第3に、国・地方を通じた行財政改革が実現する。国と地方とで重複している行政が一元化され、公務員数や人件費が減って、財政の健全化が図られる。さらには、政治のあり方や議会のあり方も大きく変わる。第4には、地域づくりにおいて住民の主体性がさらに尊重されるとともに、企業も本社や工場などの立地において選択が可能となる。
ビジョンでも示しているように、2015年を目途に道州制の導入を実現するためには政治の強力なリーダーシップが必要である。そこで、総理以下関係閣僚、地方代表、民間有識者からなる「道州制導入に関する検討会議(仮称)」を設置して、具体的な検討を行うとともに、2013年までに関連法案を制定すべきである。また、国民も「お上依存、国依存」の意識を自ら払拭して「責任分担型社会」への転換を図ることが不可欠である。他方、日本経団連は、各地の地域経済団体とシンポジウムを共催するなどの活動により、道州制導入の気運を高める活動を展開していく。
提言ではまた、道州制の導入に向けて国民の間で共有すべき理念として、7カ条からなる「道州制憲章(試案)」を提示している。なお、道州制導入による経済効果や具体的な制度設計、例えば、財政調整のあり方や中央省庁の改革、東京の取り扱いなどについては、今後さらに検討を行い、2008年秋を目途に、第2次提言として取りまとめる予定である。