日本経団連タイムス No.2850 (2007年3月8日)

税制委員会企画部会開く

−地方税制をめぐる諸課題で意見交換


日本経団連は2月28日、東京・大手町の経団連会館で税制委員会企画部会(田中稔三部会長)を開催し、一橋大学政策大学院助教授・佐藤主光氏から税制抜本改革における地方税の諸課題について説明を受けるとともに意見交換を行った。
政府・与党がめざす、今年秋以降の税制抜本改革の議論に対応すべく、日本経団連では、税制委員会企画部会が中心となって検討を進めており、今回の会合はその一環。佐藤氏からの説明概要は次のとおり。

1.地方税制の現状と特徴

地方税は、国税以上に所得課税・消費課税・資産課税と多様で複雑な税目から構成されており、課税ベースや課税対象も国税と重複しているものが多い。また、法人二税(法人住民税、事業税)や法人が支払う償却資産に係る固定資産税など、法人課税への依存度が高いことが特徴である。その結果、地方税収は景気に大きく左右され不安定であり、また、地域間の偏在が大きいという結果を招いている。

2.地方分権と地方の課税自主権

地方分権一括法の施行などにより、地方新税の導入や制限税率の撤廃など課税自主権の強化が図られているが、地域における受益と負担を住民自らが選択するという、真の意味での課税自主権は行使されていない状況にある。地方が標準税率を超えて課税する“超過課税”の対象はほとんどが法人であり、また、地方新税に関しても、投票権を持たない非居住者(観光客や企業)を狙い撃ちにしたものが多い。

3.望ましい地方税

地方税の役割は地域サービスを提供するための財源を確保することが主たる目的であり、応益原則を基本として住民の受益と負担の関係が明確化されることが好ましい。地方支出のすべてを自主財源で賄う必要はないが、独自の支出については自らの財源で賄う責任を負うべきである。地方の財政責任は最終的には地域住民に帰着するという原則を明確化する必要がある。所得の再配分機能等は地方税ではなく、国税に求められる機能である。
法人は「組織」なので、納税者であるが、最終的な負担者にはならない。地方法人課税は、税収が不安定であり、長期的には国の経済成長に悪影響を及ぼすのみならず、住民の負担感を伴わないことから、地方財政に対する有権者の無関心を助長しかねない。

4.地方税制改革の原則

地方税制改革の課題は、「税収の安定化」「税源偏在の是正」「居住者に対する応益原則の徹底」である。そのためには、国・地方間の財政移転制度の改革や法人課税への過度な依存の是正が不可欠である。改革案として、例えば、(1)法人住民税を地方共同税化することで地域間格差を是正する(2)法人事業税を地方消費税化し税収安定化を図る(3)均等割の拡充など個人住民税を見直していく――ことなどが考えられる。また、納税コストを効率化する観点から、国と地方の課税ベースの乖離を是正する必要がある。

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税制委員会では、引き続き、諸外国の税制改革の動向や少子・高齢化など社会構造の変化を踏まえた税制抜本改革のあり方に関する考え方を取りまとめていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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