日本経団連タイムス No.2847 (2007年2月15日)

「進化するメディアと社内コミュニケーション活性化セミナー」開く

−社内コミュニケーションの重要性学ぶ


日本経団連の社内広報センターは1月26日、都内で「進化するメディアと社内コミュニケーション活性化セミナー」を開催、企業のウェブ活用の現状、コミュニケーションクライシス、事例発表などを通して社内コミュニケーションの重要性を学んだ。総括講師は、企業コミュニケーションに関する業務のサポートを行っているクロスメディア・コミュニケーションズ代表取締役の雨宮和弘氏。

雨宮氏は、まず企業のウェブサイト活用の課題に触れ、多くの企業コミュニケーション担当者が技術やツールの使い方に不慣れで、社内や制作会社などの社外とうまく対応できない上、制作目的の不明確さのため結果を出せないで悩んでいることを指摘した。また、ホームページは取りあえずつくっておけばよいという意識があることや、インターネット世界の持つ怖さや責任の重さをよく理解していない経営者が多いことも挙げた。さらに、企業コミュニケーション実務の理解不足、顧客への説得力不足など、制作会社側にも問題の原因があると語った。

目的に合った社内コミュニケーションツールの活用を

最近「コミュニケーションクライシス」という言葉が聞かれるようになり、社内でのコミュニケーションの低下が目立ってきたと雨宮氏は言う。車中での化粧や携帯電話通話など他者理解やマナー・思いやりの欠如、企業における終身雇用の崩壊による忠誠心の希薄化、働く人(個)と企業のかかわり方や立場の変化のほか、ITツールの先行による情報の氾濫などを指摘するとともに、(1)団塊世代の退職という「2007年問題」によるノウハウの流出と空洞化懸念(2)データ管理による情報の不可視化と情報量の増加(3)電子メールの情報処理付加の増大――など社内コミュニケーションの活性化を阻む数多くの問題点を挙げた。
さらに雨宮氏は社内コミュニケーションの種類として、(1)社規、規則など(2)人事関連情報(福利厚生、給与、教育など)(3)事業関連情報(ミッション、経営目標など)(4)非公式情報――の4つを挙げた。その上でこの4極を俯瞰してみて、紙媒体や電子媒体など社内コミュニケーションツールをすみ分けし、バランスよく活用していくことが大事であることを強調した。ただしツールの活用に当たっては、例えばブログがはやっているし、コストも安いからやってみようという安易な動機で導入すると必ず失敗すると警鐘を鳴らした。「コミュニケーションを行いたい相手はだれか」「相手はどんな情報を欲しがっているのか」「どうすればその情報を提供できるのか」「それによってどのような関係を築きたいのか」というように、目的を明確化してそれにふさわしいツールを活用していくことが大事であることを強調した。
最後に雨宮氏は、最近の社内コミュニケーションはかなり変貌してきているので、全社的にコミュニケーションを統括するための部門を新設したらどうかと提案、「コミュニケーション部」創設の必要性を訴えた。その業務内容としては、(1)企業のミッションに即したコミュニケーションの形成(2)社内各部署のコミュニケーションの状況の把握と認識(3)改善のための適切なツールの選択と導入、継続(4)トップマネジメントや社内各部署への助言とサポート――を挙げた。

同セミナーではそのほか、ポーラ化粧品本舗人事部の高橋有紀氏による事例発表も行われた。同社では2004年、従来から発行していた紙媒体の社内報「P-com.」のほかに、新たに電子社内報「P-com.Webzine」を配信した。それぞれの発行目的を明確化し、役割期待を完全に差別化したところが特色。「P-com.」は経営理念や経営方針、行動規範の浸透のために、「P-com.Webzine」は早く知らせるというイントラの強みを生かし、情報の共有と組織風土の活性化のために役立てている。

【事業サービス本部社内広報担当】
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