日本経団連は1月31日、大阪市内のホテルで関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長、宮原賢次副会長、庄山悦彦副会長、三村明夫副会長、渡文明副会長、中村邦夫評議員会副議長・経済法規委員長、野間口有知的財産委員長、池田弘一社会貢献推進委員長、奥田務経済政策委員会共同委員長をはじめ関西地域の会員企業などから約330名が出席、「『希望の国、日本』を目指して」を基本テーマに活発な意見交換が行われた。
開会あいさつで御手洗会長は、今年1月に公表した新ビジョン「希望の国、日本」について、経済のグローバル化や少子・高齢化などの環境変化が急速に進む中で、われわれがめざすべき目標とその道筋を示すものであると説明するとともに、「希望の国」の実現のためには、まず持続的な経済成長が前提となると述べた。また今後、ビジョンで示した目標の実現に向けて、日本経団連の各委員会でさらなる検討を重ね、前例にとらわれない政策提言を行い、関係方面に働き掛けていきたいとの抱負を語った。
さらに、目標実現のためには、政治と経済が車の両輪となって改革に取り組む必要があるとの考えを示し、政策評価に基づく自主的な政治寄付について、関西経済界の一層の理解と協力を求めた。
続く活動報告では、宮原副会長が「政治への取り組み」、庄山副会長が「科学技術創造立国の構築に向けた取り組み」、池田社会貢献推進委員長が「企業の社会的責任」について、それぞれ報告し、(1)優先政策事項をベースにした政策評価と政治寄付の取り組み(2)戦略重点科学技術、高度人材の育成、政府研究開発投資の拡充への取り組み(3)CSRの推進と社会貢献活動への取り組み――などを紹介した。
意見交換では、まず関西地域の会員企業代表から発言があった。最初に津村準二東洋紡績会長が、政府が対日直接投資促進の観点から進めようとしているM&A法制の整備については、国家安全保障の見地から検討すべきであるとの意見があった。
次に佐藤存ダイソー社長から、石油などの資源価格の高騰や世界的なエネルギー資源の囲い込みの動きを受け、国家戦略からの資源政策の検討が必要であり、エネルギー源の多様化や新エネルギー資源の開発を進めるための国家的プロジェクトを推進すべきとの問題提起があった。
さらに、山田隆哉ジェイテクト会長が、若者の理工系離れが進み、団塊世代の一斉退職を迎える中で、日本の製造業の強さを維持していくためには、理工系技術者育成のための積極的施策が望まれると述べた。また、製造業が培ってきた「品質への信頼」を失いかねない問題が発生していることに触れ、「モノづくりの基本」に立ち返る必要があると述べた。
最後に立石義雄オムロン会長が、イノベーションの活性化の観点から新商品の研究開発や設備投資に対する減価償却制度の見直しなどが、日本経団連の力で、来年度税制改正に盛り込まれたことを評価し、引き続き法人実効税率の引き下げに注力してほしいと述べた。同時に企業の知的財産の創出や活用を促進させる環境整備が重要との考えを示した。また、近年のアジアの成長に触れ、日本がそのダイナミズムを取り込んで、共に成長することが成功の鍵であるとの考えを述べた。
これらの意見に対し、まず中村評議員会副議長・経済法規委員長が、安全保障の観点からM&A法制の整備を強く働き掛けていくと述べた。次いで、三村副会長が「エネルギー需要が急伸するアジア諸国と連携体制を構築し、アジア全体のエネルギー安全保障のためにわが国がイニシアチブを発揮すべき」であり、「エネルギー源と供給源の多角化で、安定供給や価格変動リスクに対応すべき」との考えを示した。また、渡副会長が「イノベーションの実現を担う高度な技術系人材の育成のため、インターンシップ制度の拡充等を通じ企業と大学の人材交流の活性化を進めるほか、優秀な研究者を集めた先端技術融合型研究拠点の整備などに取り組んでいる」ことを紹介した。さらに、野間口知的財産委員長が「経済連携協定における知的財産規定の整備、模倣品・海賊版拡散防止条約の策定など、アジアにおける知的財産保護強化に取り組む」と述べた。
最後に総括した御手洗会長は、各国とも競争力を強化するために官民を挙げて努力しており、グローバル競争はさらに厳しさを増しているとの認識を示し、「日本はその真只中にいることを忘れてはならない」ことを強調。グローバル競争を勝ち抜いていくためには、絶えざるイノベーションやICTの積極的活用による生産性の向上が必要であるとの考えを示した。さらに、構造改革の要である「官から民へ」「中央から地方へ」という2つの流れは道半ばであり、ビジョンの実現に向けて、今後の活動を行っていきたいと語った。