日本経団連タイムス No.2845 (2007年2月1日)

日本経団連グリーンフォーラム1月講座開催

−「説得力と交渉力の高め方」など、杉田プラップジャパン副社長から聴取


昨年7月に開講した第1期の「日本経団連グリーンフォーラム」は、1月17日に1月講座を開催した。今回は、プラップジャパンの杉田敏副社長を講師に、「説得力と交渉力の高め方」「異文化コミュニケーション」の2つをテーマに講演を聴いた。「説得力と交渉力の高め方」の概要は次のとおり。

■「説得力と交渉力の高め方」

説得力と交渉力を高めるには、どのようなコミュニケーションを行うかがカギを握るが、コミュニケーション自体にはまだわからないことが多い。しかし、コミュニケーションはメッセージと意味を相手に伝え、共通の価値観を創造し、人間関係をつくるためにも不可欠である。また、その目的は「人を動かすこと」にあり、相手が動かなければ、コミュニケーションはうまくいっていないことになる。
コミュニケーションは、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4要素で成り立ち、そのうち聞くことと話すことが大半を占める。コミュニケーションをとるとき、個人が持っている背景や資質などの違いなどから、送り手と受け手の間には必ず何らかのノイズが生まれる。それをいかに除去するかで、コミュニケーションの善しあしが決まる。
人間は「見たいものを見て、聞きたいものを聞く」ものであり、注意力をもって話を聞くのは10分が限界で、量と質はイコールにはならない。それゆえに、明解なメッセージを発信することが、ノイズを取り除くためにも必要となる。

次に、説得力を高めるには、その源にある「エトス」「パトス」「ロゴス」を意識しておくことが重要である。エトスは習慣や特性を表すもので、コミュニケーションをとるときに受け手が送り手に対して持っている態度を示す。パトスはフィーリング、情念、感情などを表し、ロゴスは理性やメッセージを意味する。外見や個性が初期エトスを決定する重要な要因となるが、それが高いとき初期エトスは持続し説得を容易にするが、低い場合はなかなか高くならない。これは、メッセージの送り手が信頼されていれば受け手はそれを信じやすくなるからで、受け手の信頼を得るためにも、常に正直なコミュニケーションを心掛けることが大切である。

コミュニケーションをとるには4つの手法があり、それぞれに長所と短所をもっている。「コントロールされたメッセージ」は、媒体やタイミングを選べる反面、コストが高く、信憑性に問題を残す。「ICTを用いたホームページなど」は、24時間リアルタイムで伝わるが、情報過多や信憑性に疑問をもたれる。「セミナーやイベント」は、反応がすぐに現れて最も効果的だが、コストの高さや時間をはじめとするさまざまな制約を受ける。「インタビューなどのメディアを通す方法」は、信憑性も費用対効果も高いが、最終結果をコントロールできない。それぞれの手法の特長を理解し、時と場合によってこれらを使い分け、より効果的なコミュニケーションを行うことが、説得力、交渉力を高めることになる。

■「異文化コミュニケーション」

続く第2講座の「異文化コミュニケーション」で杉田講師は、まず、自分以外はすべて異文化であるとの認識が重要で、その観点から異文化理解を進めていく必要があることを指摘。例えば、日本企業の中国での活動はとみに活発だが、文化や感情の違いから、時に不必要な摩擦を起こすことを数多くのスライドを用いて具体的に例示し、これに対応するには「文化面まで掘り下げて、相手のことをよく知る努力をすることが何より大切」であると示唆した。

【事業サービス本部研修担当】
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