日本経団連タイムス No.2843 (2007年1月18日)

今後の最低賃金制度のあり方まとまる

−日本経団連、労使関係委などで対応


今後の最低賃金制度のあり方について2005年6月から検討してきた厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会「最低賃金部会」(部会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は12月27日、「今後の最低賃金制度の在り方について」と題する部会報告を取りまとめ、厚生労働大臣に同日答申した。同答申は、最低賃金制度の第一義的な役割はすべての労働者について賃金の最低限を保障する安全網であるとした上で、その役割は地域別最低賃金が果たし、産業別最低賃金等はそれとは別の役割を果たすものとして民事的なルールに改めるというのが大きなポイント。厚生労働省は今後、同答申の内容に基づく最低賃金法等の改正法案を今年の通常国会に提出する予定。

今後の最低賃金制度のあり方については、05年4月に厚生労働大臣から諮問を受けて最低賃金部会を新設し、同年6月から検討を開始。(1)地域別最低賃金(2)産業別最低賃金(3)労働協約拡張方式――のあり方を中心に議論を行ってきた。
産業別最低賃金と労働協約拡張方式の廃止を主張する使用者側と、産業別最低賃金の継承・発展を求める労働者側とで意見が対立する中、計4回にわたって公益委員より試案が示され、それを踏まえて審議を重ねて取りまとめたものが、今回の答申である。

答申ではまず、(1)最低賃金制度の第一義的な役割はすべての労働者について賃金の最低限を保障する安全網であり、その役割は地域別最低賃金が果たすべき(2)産業別最低賃金等は安全網とは別の役割を果たすものとして民事的なルールに改める(3)社会保障政策との整合性を考慮した政策が必要(4)就労形態の多様化への対応などの観点からの見直しが必要――との基本的考え方を提示。
その上で、(1)すべての都道府県で地域別最低賃金を決定しなければならないものとする(2)地域別最低賃金の決定基準(労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力)のうち、生計費については生活保護との整合性も考慮する(3)地域別最低賃金違反の罰金額の上限を労働基準法第24条違反(賃金不払)よりも高いものとする(4)産業別最低賃金は最低賃金法における罰則を適用しない(5)産業別最低賃金の運用はこれまでの内容を踏襲する(6)労働協約拡張方式は廃止する(7)派遣労働者に対しては派遣先の最低賃金を適用する――との具体的内容が示されている。

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最低賃金部会の審議に当たって日本経団連は、地方経営者協会や業種団体に最低賃金部会の審議状況を報告するとともに、意見交換やアンケートの実施などを通じて意見集約を行った上で、最低賃金制度に関する事項を所管している労使関係委員会(加藤丈夫委員長)に諮って対応を決定。最低賃金部会の取りまとめに当たっては、「現行の産業別最低賃金制度について何らかの見直しを行い、少しでも前進できるよう努める」との基本方針を定めて審議に臨んだ。
その結果、産業別最低賃金の最低賃金法における罰則の適用除外や労働協約拡張方式の廃止などを盛り込んだ答申内容となった。

【労政第一本部労政担当】
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