日本経団連は12月11日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(野間口有委員長)を開催し、来賓の内閣官房知的財産戦略推進事務局の小川洋事務局長、藤田昌宏事務局次長から、知的財産戦略本部が取りまとめた「国際標準総合戦略」について説明を聴取した。
冒頭、あいさつに立った小川事務局長は、「国際標準化活動は、市場を制する上で知的財産と並んで非常に重要な意味を持つようになってきている。何よりも産業界、企業の戦略的かつ長期的な取り組みが求められており、政府としても情報提供、人材育成などの面で積極的に支援していきたい」と述べた。
続いて藤田事務局次長から「戦略」について説明が行われ、「近年、国際標準化の持つ意味は大きく変化している。その理由としては、(1)グローバル化の進展によって各国の市場が単一化しており、市場間で共通の規格が必要となっていること(2)WTO/TBT協定(貿易の技術的障壁に関する協定)によって、国内標準は国際標準を基礎にして策定しなければならなくなっていること(3)発展の著しいアジア諸国が自国の独自技術の国際標準化に積極的に取り組み始めていること(4)企業において自社の独自技術を知的財産化し、その上で国際標準化のプロセスに持ち込むといった事例が多くなっていること――などがある。国際標準化をめぐる環境の変化によって、その重要性が飛躍的に増大しているとともに、いかに優れた技術であっても国際標準化に失敗すれば市場を獲得できない状況になっていることを認識しなければならない」と指摘した。
意見交換では、日本経団連側から、「巨大な国内市場を背景に独自の国内標準を策定し、国際標準の策定プロセスに参加しない国もある。このような場合にはどう対応すれば良いのか」という質問が出された。これに対して藤田事務局次長は、「既に国際標準が策定されている分野については、WTO/TBT協定を根拠にして説得することができる。しかし、まだ国際標準のない分野については、日本企業に参加の呼びかけがあった場合、積極的に対応した方が良いのではないか」との考えを示した。また、「国際標準化の重要性が強調されているが、共通化された部分が多くなり、企業の自由度が低くなる。両者のせめぎ合うところで悩んでいる」との懸念に対しては、「すべてを国際標準化すべきというわけではなく、国際標準化しないことも戦略となる。各企業が自身にとって最も有利と判断した方法を選んでもらいたい。政府としても支援を行いたい」との考えを示した。
なお当日は、併せて日本規格協会における国際標準化への取り組みについて、塩沢文朗・同協会理事から説明を聴取した。
日本規格協会では、2005年4月に国際標準化支援センターを設置し、国際規格開発支援、幹事国業務支援、国際標準化人材の育成などに取り組んでいるが、知的財産戦略本部の「戦略」の策定を受けて、わが国の産業界の効果的な国際標準化活動を促進するため、国際標準化支援センターにおいて、さらなるインフラの整備と専門情報の充実に取り組んでいくこととしている。