日本経団連タイムス No.2836-02

日本経団連は１０月２４日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会（連合、高木剛会長）との首脳懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗冨士夫会長をはじめ勝俣恒久副会長、岡村正副会長、渡文明副会長、江頭邦雄副会長、池田守男評議員会副議長、鈴木正一郎評議員会副議長、加藤丈夫労使関係委員長、指田禎一中小企業委員長、大塚陸毅国民生活委員長、井手明彦社会保障委員会共同委員長らが、連合からは高木会長はじめ副会長ら、合わせて約３０名が参加。御手洗会長就任後、初の首脳懇談会となる今回の会合では、(1)雇用問題(2)ワーク・ライフ・バランス（仕事と生活の調和）(3)少子化対策・社会保障――をテーマに意見交換を行った。

冒頭あいさつで連合の高木会長は、最近の企業のあり方に関する論議について、「ＣＳＲや生産性三原則といった社会的・人間的な側面も、企業のあり方に関する大きな視点である」と語った。
続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、雇用問題では若年層や地域の問題など多方面の論点があること、また、ワーク・ライフ・バランスでは人材の多様性と少子化対策の観点からも重要であることなどを指摘した。

意見交換では、まず雇用問題について日本経団連から、(1)企業は、６５歳までの雇用の確保に向けての取り組みを労使の話し合いにより進めているが、団塊世代の大量退職を控え、個別労使の話し合いはますます重要(2)若年者雇用の問題は、法律による一律的な年齢規制で解決できるものでなく、新卒者以外に門戸を広げようとする企業を後押しする施策が必要(3)雇用情勢は改善傾向にあるものの、地域間でばらつきがあり、地域の行政と産業が連携して雇用創出に向けた取り組みを推進することが重要(4)中小企業は、ＩＣＴ（情報通信技術）を駆使した情報発信や採用ルートの多様化による人材確保、自社の成長・発展に対する情熱の共有化や透明性の高い組織づくりの促進など、人材確保・育成に関する地道な努力が大事――などの意見が出された。
一方、連合からは、(1)パートタイマーなど非典型労働者の増加は将来への不安につながることから、企業は長期的な視点に立って、正規雇用への転換を図るよう求めていきたい(2)高齢者雇用においては、職場や労働時間などの環境整備、職業訓練機会の提供による能力発揮が可能な仕組みの構築など、高齢者の能力を最大限に引き出す施策が必要である(3)派遣労働者など外部労働者の活用に当たっては十分な労使協議を行い、適正な管理をする必要がある――などの発言があった。

ワーク・ライフ・バランスについて、日本経団連は、(1)その実践に当たっては、労使が十分なコミュニケーションをとりながら、生産性向上の視点を踏まえつつ、仕事を定量的に評価できる仕組みが必要である(2)〝ライフ〟の充実のために〝ワーク〟の効率化を自ら工夫するなど、働く側の意識変革も求められる(3)成功事例を早期に示していくことが制度の定着に役立つ――などの見解を表明した。
これに対して連合は、(1)企業・従業員双方にプラスとなる働き方という観点で追求する必要があり、労使共通の課題として社会的な取り組みにしていくことが重要である(2)働き方の基準を変えることで、長時間労働の是正に取り組む必要がある――などの考えを示した。

少子化対策・社会保障に関しては、日本経団連から、(1)育児休暇や労働時間の多様化などの制度の活用に当たっては、法的な規制ではなく、労使が協調して自主的に取り組むことが大切(2)企業自らが働き方の多様化や職場の意識改革に取り組み、子育てしやすい環境を用意するとともに、ニーズに対応した保育サービスの充実が必要(3)年金制度に対する国民の信頼の回復や世代間の給付と負担の格差などの問題が残っており、引き続き負担に軸足を置いた改革を推進すべき(4)高齢者医療制度と介護保険制度は、施設・報酬体系、保険制度が一体となった構造改革が必要――などの意見を述べた。
一方、連合からは、(1)国民年金保険の納付率の現状や出生率の低下などを踏まえると抜本的な改革が必要(2)働き方の改革こそが少子化の流れを変える上で最も重要――などの意見があった。

会合の最後に総括した御手洗会長は、日本を「希望の国」にすべく、さまざまな分野で改革を進めたいとの意向を示した上で、労働分野については各企業の実態を踏まえた労使自治を原則に考えていくべきであると強調した。

連合との首脳懇談会を開催

－雇用問題などテーマに意見交換