日本経団連の御手洗冨士夫会長は7日、日本経団連訪欧ミッションの全日程を終え帰国した(出発は9月28日。第一報は10月5日号既報)。ミッションでは、ベルギー、ドイツ、フランス、イギリスの4カ国を訪問、バローゾ欧州委員長、アルムニア欧州委員(経済・通貨担当)、セリエールUNICE(欧州産業連盟)会長(以上ベルギー)、メルケル・ドイツ首相、グロース・ドイツ経済・技術大臣、トゥーマンBDI(ドイツ産業連盟)会長(以上ドイツ)、シラク・フランス大統領、ボルロー・フランス雇用・社会連帯・住宅大臣、パリゾMEDEF(フランス経団連)会長、シモン・パリ商工会議所会頭(以上フランス)、ブラウン・イギリス財務大臣、ダーリング・イギリス貿易産業大臣、マーシャルCBI(英国産業連盟)国際評議員会議長(以上イギリス)らと会談した。訪問先での懇談概要は次のとおり。
まず、各訪問先では、日欧経済関係は、かつての厳しい貿易摩擦と対立の時代とは異なり、協調と連携を基調とした良好な関係が構築されているとの認識が改めて確認されるとともに、日欧経済の好調さが両地域の一層の経済関係拡大につながるとの期待が表明された。
また、会計基準のコンバージェンスについては、日欧間における基準の相互承認の必要性について日本側から理解を求めた。これに対し、バローゾ欧州委員長からは、日本側の懸念は承知しており、日・EU規制改革対話の枠組みの中で対応していきたいとの発言があった。
EUの拡大は加盟国に大きな経済的恩恵をもたらしており、多くの国が加盟を希望しているとの指摘がなされた。なお、ルーマニア、ブルガリアが来年1月に加盟することが既に決定しており、今後もバルカン諸国との加盟交渉が引き続き行われていくものの、トルコの加盟については依然解決すべき問題が残されているとの見解が示された。
単一通貨ユーロの導入については、外部からのリスクの遮断、インフレ対策として効果を発揮しており、おおむね欧州経済の成長にプラスになっているとの前向きな評価がみられた。一方、現在のユーロ高への懸念や、欧州中央銀行の排他的権限となっている金融政策とユーロ圏各国の経済政策の調和が課題であるといった意見も聞かれた。
来年1月からのスロベニアへのユーロ導入が決定されているが、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどは導入までにあと数年は必要であろうとの見解も示された。また、英国では、近い将来のユーロ導入はないとの見通しが官民双方から聞かれた。
シラク大統領は、フランスとオランダの国民投票によって否決されている欧州憲法条約について、今後2年間で制度改革を進めたいとして、発効に向けた強い意欲を示した。
バローゾ委員長から、欧州委員会はWTO新ラウンド交渉の再開に積極的にコミットしているとの表明があり、その他の政府・経済界要人との会談においても、WTOは多角的自由貿易体制の根幹であり、中断している新ラウンド交渉の早期再開に向け、日欧をはじめとした主要国が協力していくことが重要であるとの認識で一致した。
また、グローバル化が進展する中、日欧ともに抜本的な構造改革やイノベーションの促進などが喫緊の課題となっているとの問題意識が共有された。具体的には、ドイツのグロース大臣からは、企業の国際競争力の維持・強化のため、付加価値税率(VAT)を引き上げる一方で、法人税率を2008年以降引き下げる改革が、また、英国のブラウン大臣からは、法律違反の恐れがないものは規制しないといった思い切った規制改革アプローチが説明された。
そのほか、外国人材・移民の受け入れ、BRICs経済の見方、地球環境問題、資源・エネルギー問題などについて意見交換を行った。
ミッション派遣が安倍新政権の発足と機を同じくしたこともあり、訪問先要人からは、新政権の政策への非常に高い関心と小泉改革の継承に対する大きな期待感が表明された。これに対し、御手洗会長は、新政権は構造改革を推進し、イノベーションを実現することにコミットしている旨を伝えた。