日本経団連の行政改革推進委員会規制改革推進部会(山岸隆部会長)は9月14日、内閣府公共サービス改革推進室の櫻井和人参事官を来賓に迎え、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。
会合では、今年7月に施行された「公共サービス改革法(競争の導入による公共サービスの改革に関する法律)」に従い、今後本格的に導入される市場化テストについて櫻井参事官が説明した後、質疑応答と意見交換が行われた。
説明の中で、櫻井参事官はまず、「公共サービス改革法制定の趣旨は、『民間にできることは民間に』という構造改革を具体化し、国民のためにより良質かつ低廉な公共サービスを実現することである」とし、「そのために国民の立場に立って公共サービスの不断の見直しを行い、不要なサービスは廃止し、官民競争入札・民間競争入札を活用して、競争の導入による公共サービスの改革を推進していく」と述べた。
加えて、櫻井参事官は「同法制定の背景には、1980年代から諸外国においても『官から民へ』が大きな潮流となり、アメリカやイギリス、オーストラリアなどで市場化テストが活用されるようになったことで、気運が盛り上がった」と説明、アメリカのインディアナポリスにおける事例などを紹介した。櫻井参事官によると、インディアナポリス市では、市場化テストの導入により、財政の健全化や地域経済の活性化、組織や職員の活性化によるサービス水準向上などの効果があったとのことである。
市場化テストの本格的導入に当たり、政府の取り組みの指針と対象事業を定めた「公共サービス改革基本方針」が9月5日に閣議決定されたが、櫻井参事官からは、基本方針の策定経緯やその内容、今後の実施プロセス等について説明があった。
具体的には、対象事業として、国民年金保険料の徴収、ハローワークの職業紹介や就職支援、統計調査などを含む5分野9業務が決定しており、このうちの5事業は、今年末までに入札が行われる予定との紹介があった。なお、対象事業については、民間事業者や地方公共団体等から意見・要望を募集し、57の主体から193件に上る要望があり、今後は、要望のあった事業について担当各省からヒアリングを行い、必要に応じて対象事業に加える予定であるとの説明があった。
その後の質疑応答では、山岸部会長から「サービスの質を評価することは難しいのではないか」との指摘があった。これに対し櫻井参事官は、「基本方針を策定する際には、公共サービスの質を維持するための仕組み作りに腐心した」と述べるとともに、「競争入札の対象事業に選定された事業の実施要項は担当各省が策定するが、その中に、確保すべきサービスの質について記載するよう求めること、また、第三者機関である官民競争入札等監理委員会が実施要項を検証することで、質の維持を図る」と答えた。さらに、「官民競争入札等監理委員会は、透明性、中立性、公正性を確保するために、入札までの一連のプロセスを監視する立場である」と述べた。
日本経団連はかねて、「官から民へ」の構造改革を実現する重要な制度として、市場化テストの導入および公共サービス改革法の制定を求めてきた。今後、公共サービスの質の向上とコスト削減が進んで市場化テストについての国民の理解が増し、あらゆる公共サービスがコストと質の両面から見直され、改善されることに期待が寄せられている。