欧州委員会のフェアホイゲン副委員長が14日、日本経団連を訪問し、御手洗冨士夫会長と懇談した。
フェアホイゲン副委員長はまず、日本とEUは高齢化など、解決しなければならない共通の課題を抱えており、両者の協力の必要性は増し、極めて重要な戦略的パートナーとなっていることを強調。副委員長に就任後初めてのアジア訪問の最初に日本を選んだのは偶然ではなく、こうした理由によるものであると述べた。また、日本経団連がEU拡大を評価していることについて、EU拡大がEUのみならず、日本企業にも重要な機会を提供するものであり、他国にとっても大きなプラスとなるだろうと語った。
続いて、フェアホイゲン副委員長は、EUは欧州に要塞を築き、その中に閉じこもろうとしているのではないこと、市場経済を根付かせるためには、市場が開放的であることが望ましく、どのような貿易障壁も撤廃されるべきであると考えていることを説明。EUのみならず、域外の人々にとっても、より良いビジネス環境を整備する必要があると述べた。また、日本政府と、(1)知的財産権の保護(2)イノベーションの促進(3)互いの規制環境の収斂――の3つの分野における協力について話し合ったと説明。これらを実現するためには日本の経済界の協力が必要であり、定期的、恒久的な対話の枠組みを築くことが重要であると指摘した。
このうち知的財産権の問題については、今回の訪日中の会合で中心的な話題となっており、知的財産権の侵害が明らかに行われている国に対しては、権利の執行が的確に行われるよう日・EUが力を合わせて働きかけることで一致したと述べた。さらに、日本企業について、EUの生産者としての存在意義が高まっていることを歓迎するとの考えを表明。新加盟国の安い賃金だけではなく、インフラや労働力の質、規制環境、教育レベルなど全体の環境を含めて、生産拠点としての魅力が高まっていると述べた。
これに対し御手洗会長は、日本経団連が9月末から10月初旬にかけて欧州にミッションを派遣する予定であることを報告。日・EU関係は年々拡大しているが、さらに広く深く関係を強化していきたいと述べた。
また、4億5千万人のEU市場をさらに発展させるためには、より開放的でなければならないと指摘した上で、EUが域外の国との関係においても保護主義を排し、開放主義を貫くとの方針を聞いて、安心するとともにそれに賛同すると語った。その上で、知的財産権の保護は日本、EU双方にとって重要な課題であり、権利侵害の防止のみならず、特許などを日本とEUの間で相互に承認するようなところまで発展させたいとの期待を示した。
規制緩和については、両地域間の交易関係がスムーズにいくよう議論を行い、進めていきたいと述べた。
さらに、国際会計基準の確立にあたって、互いの基準を認め合うことが基本的に重要であると述べた上で、EUと協力しながらコンバージェンスを進めたいと述べた。
また、これまで欧州は、消費市場として関心を集めてきたが、ここ数年は生産拠点としての魅力が高まっているとの見方を示した。EUが東方に拡大した今、その生産拠点としての魅力はますます高まっていくものと思われ、このことが日・EU関係の発展や雇用の創出などを通じてEUを一層飛躍させるものとなるだろうと述べた。