日本経団連は、企業の中核人材の育成をめざし、今年新たに「日本経団連グリーンフォーラム」を開講、第1期開講式を5日、都内で開催した。
開講式には、第1期のメンバーとなる企業の部課長クラス21名のほか、アドバイザーの梅津祐良・早稲田大学経営大学院教授、関島康雄・日立総合経営研修所社長、講師の杉田敏・プラップジャパン副社長が出席。アドバイザー、講師のあいさつに続きメンバーが自己紹介を行い、参加するに当たっての意気込みや抱負などを語った。開講式後に行われた懇親会では、チーフ・アドバイザーを務める日本経団連の草刈隆郎副会長が、参加者に激励の言葉を贈った。
あいさつの中で梅津アドバイザーは、企業を取り巻く環境の変化により、21世紀の管理者は大変厳しい状況に置かれていると指摘した上で、重要なのはメンバー同士のインタラクション(相互作用)であり、お互いに議論し合い、学び合うことであると述べた。また、現代のビジネスにおける成功の要因はIQ(知能指数)ではなくEQ(こころの知能指数)であり、人の心を動かす力を身につけてほしいと語った。
続いてあいさつした関島アドバイザーは、学習は3Dラーニングといわれるように、(1)知識、スキルを習得する(2)心が動いて習ったことに反応する(3)それを使ってみる――の3つのディメンション(次元)があり、これらを通じて初めて物事が自分のものとして身につくと説明。研修ではこの3つのディメンションを体感できるように心掛けてほしいと述べた。
講師を代表してあいさつした杉田講師は、「もう一度大学で学ぶことができるなら、書くことと大勢の人の前で話をすることに力を注ぎたい。効果的に意思を伝える能力ほど人生で大切なものはない」とのフォード元米大統領の言葉を紹介し、コミュニケーションの大切さを強調。コミュニケーションの目的は相手との意思疎通を図ることだが、人の心を動かして初めてコミュニケーションが成功したといえると述べた。
メンバー1人ひとりの自己紹介では、「知識や視野を広げたい」「異業種のメンバーと交流し、今までにない自分を発見したい」など、グリーンフォーラムへの期待や抱負が述べられた。
開講式後に行われた懇親会であいさつした草刈チーフ・アドバイザーは、資源のないわが国にとって最大の資源は人材であるが、昨今の状況をみると人材育成は喫緊の課題であり、そういう意味で大きな転機を迎えていると指摘。1990年代以降、世界がグローバル競争の時代に突入する中、わが国は目標を失い迷走していたが、その原因として、従来のキャッチアップ型教育からフロントランナー型教育への転換がうまくいかなかったことを挙げた。その上で、これからの人材育成のキーワードは「人材の多様性」と「自立」であり、各個人には目標に向かって自らを磨くことに励み、現状に安住しないという心構えが必要になっていると述べ、個別企業を越えた異業種交流がますます重要になると強調した。
さらに、ラグビーの基本精神である“One for All, All for One(1人はすべてのため、すべては1人のため)”という言葉を紹介。これが意味するものは、チームや仲間のために何ができるかが、1人ひとりに求められているということであるが、企業の場合も全く同じで、会社、上司・部下、家族、コミュニティーなど、すべての利害関係者のために自ら考え努力していくことが、自分自身のためにもなると激励した。
日本経団連グリーンフォーラムは、中核となる社員の育成を望む会員企業の声にこたえて開講したもの。コーチングから異文化コミュニケーションまで、各界の第一線で活躍する実務家・専門家を講師に迎え、組織や部門をリードできるプロフェッショナル人材の育成をめざす。第1期は5日の開講式を皮切りに来年3月まで、2回の合宿を含む20講座を実施する。