日本経団連の運輸・流通委員会(岡部正彦共同委員長、井坂榮共同委員長)は6日、提言「物流インフラの整備について〜ボトルネックの解消を通じた物流ネットワークの構築〜」を公表した。今回、同委員会が提言を行ったのは、(1)わが国産業の国際競争力強化と国民の生活利便向上の観点から、国家戦略として真に物流の効率化に役立つインフラ整備をハード、ソフト両面から進める必要がある(2)アジアにおける国際分業の進展を踏まえ、アジア規模のシームレスな物流ネットワークを戦略的に構築することが急務である(3)特に、現在、公共事業費削減の方針が打ち出されている状況の中では、より緊急度の高いものから重点的に整備していく必要がある――との認識に基づいてのこと。円滑な物流を妨げているボトルネック解消の観点から、産業界としての物流インフラ整備の考え方をまとめている。提言の概要は次のとおり。
首都圏三環状道路の完成は、首都圏の渋滞解消、東西を結ぶ人的・物的交流の円滑化につながる。首都圏中央連絡自動車道については、既に開通の目標年度が明示されているが、東京外郭環状道路、首都高速中央環状線についても、可能な限り前倒しで完成をめざすべきである。
港湾・空港から内陸の主要物流拠点への輸送の円滑化という観点から、港湾・空港の背後にある道路網を充実させるとともに、幹線道路におけるボトルネックを解消し、物流ネットワークの整備を推進すべきである。
国際海上コンテナ車両やモーダルシフト対応車両が通行できる幹線道路を整備すべきである。
増大する航空需要に確実に対応し、空港機能や航空企業等の応需能力を向上させ、利用者の利便性を図ることが重要である。「総合物流施策大綱(2005―2009)」の記載項目について、ハード・ソフト両面での環境整備を着実に実施するとともに、実現可能なものは早期に実現すべきである。特に羽田空港・成田空港は国の基幹的インフラであり、その整備は焦眉の急である。
鉄道による物流については、輸送力の強化とともに、トータルの輸送時間を短縮することが重要である。主要幹線区間の輸送力増強を図るとともに、E&S(着発線荷役)方式の貨物駅を増やす必要がある。特に設備等が老朽化するなどE&S化には不向きな駅については、新たな拠点駅の整備も検討する必要がある。
高速道路・港湾・空港・鉄道などの物流インフラは、昭和30〜40年代に整備されたものが多く、今後、大規模改修・更新が増えてくる。メンテナンスを強化し、延命化を図るなどの工夫により、既存ストックの計画的、効率的な整備計画を策定し、更新・維持・修繕に必要な財源を確保すべきである。