日本経団連は20日、提言「日・インドネシア経済連携協定(EPA)の早期締結に期待する」を公表した。
日本とインドネシアのEPAについては、2005年7月の本交渉開始以来、今年4月まで合計4回の交渉が行われた。5月中旬の経済財政諮問会議では、「今年夏ごろまでに交渉の主要点について実質的な妥結をめざす」との目標が掲げられた。
次回(第5回)交渉は、8月2〜5日、バリで予定されており、ここで大筋合意に至ることが期待されるが、2国間でEPAを締結するためには、国内制度を整備することが不可欠である。この点、インドネシアでは、海外からの投資が適切に保護されるよう、投資法の早期成立がここ数年要望されていながら、いまだ成立していない。一方、日本側も、「人の移動」等の分野で、インドネシア側のリクエストに十分に応えるオファーを明示できていない。
こうしたことを背景に日本経団連は、EPA交渉が山場に差しかかっている今、真に互恵的なEPAの締結を促す観点から、両国政府に対して提言を行うこととした。去る6月15日にインドネシアのマリ商業大臣が御手洗冨士夫日本経団連会長を表敬訪問した際には、早速、提言の実現方を要望したところである。提言の概要は、次のとおり。
EPAを通じて物品貿易の自由化が進展すれば、インドネシア産品の対日輸出増につながることが期待される。また、現地企業や日系企業にとっても、関税負担の軽減に加え、原材料・部品の調達先や製品の販路の選択肢が広がるなど、大きなメリットが期待できる。さらに、インドネシアの生産・輸出拠点としての魅力向上、国際競争力強化にもつながるため、WTOルールに整合的な、高いレベルでの関税撤廃実現を期待している。
サービスについても、EPAを通じた自由化が重要である。インドネシアでは、小規模小売やインフラなどが内国民待遇等の例外分野とされ、外資100%が認められていない。こうした外資の投資形態や出資比率の制限を緩和・撤廃する上からは、投資法の早期成立・施行とともに、外国投資規制分野を明示したネガティブリスト等、関連規程・規則の見直しが重要である。
少子・高齢化社会に対応する上で、女性や高齢者の活用に加えて、外国人材の受け入れも、重要なテーマである。当該交渉においては、現行の外国人研修・技能実習制度の見直しなどについて、インドネシアから要望が出されている。わが国としては、日・インドネシアEPAを通じて先行的に、優秀な研修・技能実習修了生や質の高い技術・技能を有する人材の就労を許可する制度を整備するなど、積極的に対応していくべきである。
エネルギー供給面で、インドネシアはわが国LNG輸入の約3割を占めるなど、日本にとって最も重要な国の1つであるが、インドネシアから日本へのLNG輸出契約の多くが2010年に期限を迎える中、インドネシア政府は先般、天然ガスの国内への優先的供給を検討する方針を示唆した。わが国エネルギー安全保障などへの影響を極小化するためには、EPAを通じて、政策変更に対する事前通知等を求めるとともに、日本も、代替エネルギー開発等に対する協力などを通じて、インドネシアの持続的な経済発展に寄与することが重要である。
投資先としてのインドネシアの魅力を向上させるためには、法令運用の公平性・厳格性・予見可能性を高めることを通じて、外資が安心して投資・ビジネス活動を展開できるよう行政手続きを改善する必要がある。このため、EPAにおいて、ビジネス環境整備の枠組みを盛り込むことが重要である。