4月1日から、公的年金(厚生年金、国民年金)の積立金の運用体制が一新された。これまでは特殊法人であった年金資金運用基金が、厚生労働大臣から年金資金の寄託を受け、大臣が定める基本方針に沿ってその管理運用を行っていた。今後は、政府の「特殊法人等整理合理化計画(2001年閣議決定)」の一環として年金積立金の管理運用に特化するために同日発足した『年金積立金管理運用独立行政法人』が、その業務を引き継ぐこととなった。
新法人は、業務運営について厚生労働大臣が定めた「中期目標」に基づき、「中期計画」や業務運営の基本方針である「業務方法書」を定めており、中期計画等に関する審議や運用状況など管理運用業務の実施状況を監視する「運用委員会」が新法人に設置された。運用委員には、「経済・金融に関して高い識見を有する者」が厚生労働大臣によって任命されており、経済界からは日本経団連の推薦を受けて、東芝の島上清明常任顧問が就任している。
運用委員会については、新法人の発足準備のため、昨年7月から8回の準備会合が開催されてきた。厚生労働大臣は中期目標の1つとして、実質的な運用利回りを確保するために長期的に維持すべき資産構成割合(ポートフォリオ)を定めることを指示しており、同準備会合は、旧基金が採用していた「基本ポートフォリオ」を中期計画に引き継ぐことなどを承認している。
同時に、これまで旧基金が行っていた大規模年金保養基地(グリーンピア)等の施設事業や年金住宅融資等の融資業務が廃止された。グリーンピアは全国に11基地13カ所が設置されていたが、昨年12月までにすべての施設が売却されている。また、年金住宅融資の新規貸付は05年度ですべて終了しており、同債権の管理・回収業務は、年金教育資金融資あっせん業務と併せて、4月1日付で独立行政法人福祉医療機構に承継された。
旧基金は、05年12月末時点で市場運用分として約69兆円、引き受け義務が法律で定められている財投債として約31兆円、合計で約100兆円を運用していた。そのほか、01年の財投改革により財政融資資金へ預託されていた年金積立金が08年までに随時償還されることから、新法人の運用資産は今後ますます大きくなることが見込まれている。