日本経団連は3月24日、東京・大手町の経団連会館でカナダ委員会(吉野浩行委員長)を開催し、ジョセフ・キャロン駐日カナダ大使から、カナダ新政権の政策方針や日加経済連携強化に向けた考え方などについて説明を聴取後、意見交換を行った。
キャロン大使はまず、今年1月の総選挙で12年ぶりに保守政権を誕生させたハーパー新首相の施政方針について説明。新政権は、(1)「説明責任連邦法」の制定と施行による政府の説明責任の強化(2)「物品サービス税」の削減など就業者のための減税(3)司法制度の強化、国防力の増強と移民政策の充実(4)児童手当の支給等、保育に関する支援――を基本方針としていると述べた。
また、カナダにおける国際貿易・投資の重要性に鑑み、新政権においても投資環境の整備と安全保障の観点から、引き続き大陸西側の港湾整備による投資促進を重視する方向にあると指摘、前政権が推進してきた「パシフィック・ゲートウェイ・プロポーザル」の継続義務を負った大臣が任命されたことを明らかにした上で、このことは日加双方の経済関係にとって大きな意義があるとの見方を示した。さらに、ハーパー新政権が選挙運動中に、「アジアの民主的パートナーとしての日本とインドとのFTA締結」を掲げた点を強調し、具体的に国名が挙がっている日本は、カナダの重要な戦略パートナーと位置づけられており、新政権は日本との関係強化に重点をおく方向にあるとの見解を述べた。
このほか新政権は、国防・援助政策に関しては前政権の方針を引き継ぐ一方、外務と国際貿易省の将来的統合の政策については、その統合プロセスを停止すると説明した。
また、日加経済連携強化に関し、キャロン大使は、官民挙げて日加関係の強化に向けた効果的で有益な取り組みを促進することが重要であると指摘。新政権においても、共同研究を一層積極的に推進していく方針にあると言及した。現在進めている共同研究報告書については、日加両政府が真剣に取り組み、過去と現在の貿易・投資環境の整理や、創造的な日加経済枠組みに向けた将来展望、経済モデルを用いた分析など、調査・検討、記述作業がかなり進展していることを報告。さらに新政府が民間の視点も活用したいとの考えから、今後は実務に基づく意見を聴取するため、民間部門との十分な協議を行っていく段階にあり、日本経団連とも積極的に意見を交換していきたいとの意向を示した。
続いて行った意見交換では、まず日本経団連側から、カナダがFTAのパートナーとして日本を重視する方向にあるとのキャロン大使の説明に歓迎の意を示したほか、今後の日加経済連携の方向性や韓国とのFTA交渉の展望、対米関係、対中貿易政策――などについて意見を交わした。