次代の産業界を担う創造的なリーダー養成をめざす「日本経団連フォーラム21」第16期生・31名の修了式が15日、都内で行われた。
修了式の冒頭あいさつで奥田碩チーフ・アドバイザー(日本経団連会長)は、企業の良きリーダーとなるには、何よりも「惻隠の情」を持つことが大切であることを強調した。惻隠の情について奥田チーフ・アドバイザーは、自分や自分の会社、自分の国だけが良ければいいというものではなく、勝者がいれば敗者がいることを考え、敗者に対する惻隠の情を持つことが必要であるが、最近そうした気持ちが日本人から失われつつあると指摘。さらに惻隠の情とは換言すればCSRであり、企業を発展させるためには、利益と同時にCSRを追求していかなければならないと述べた。
このほか奥田チーフ・アドバイザーは、今後は物事を地球規模で考えることが不可欠であり、国内ばかりを見ていると企業も人も取り残されると語った。
続いて、茂木賢三郎・キッコーマン副会長、清家篤・慶應義塾大学教授の各アドバイザーがあいさつ。この中で茂木アドバイザーは、最近の社会風潮について、ものごとを論理的に深く考察することなく、目新しいキャッチフレーズのようなものに付和雷同的に殺到していく傾向があると警告。経営リーダーはこうした態度をとるのではなく、幅広い事実認識に基づいて、本質を理解する必要があると述べた。
また清家アドバイザーは、経営リーダーは、目先の応用問題だけにとらわれるのではなく、ものの本質・原理を押さえることが重要であることを強調。専門分野でないから答えられないといった態度は許されず、すべての分野において、原理に基づく正しい判断ができなければならないと述べた。
奥田チーフ・アドバイザーから、今後の活躍への期待を込めて、1人ひとり修了証書を手渡されたメンバーは1年間の講座を振り返り、「感銘を受けた講義の1つに『武士道を見直す』がある。武士道の深い倫理観が明治時代のエネルギーと気骨につながったということが印象深かった」「フォーラムへの参加を通じて作り上げた人と人とのつながりを、今後も大切にしていきたい」「これまで関心を持たなかった幅広いテーマを学ぶことができて、思考の幅が広がった」などの感想を述べた。
日本経団連フォーラム21は、次代を担うリーダー育成を目的に、1990年に設置したもので、日本経団連会長がチーフ・アドバイザーを務める。企業の役員や部長クラスのメンバーが定期的に集まり、企業経営を中心に社会、国際、時事問題など多岐にわたる分野を、経営者や識者の講話、メンバー同士の討議などを通じて学ぶ。その他、海外視察、洋上合宿なども行い、相互啓発を図るとともに、リーダーとしての識見を高める。
2006年度第17期は、5月に開講する。