日本経団連は2月20日、都内のホテルで、日本エネルギー経済研究所の内藤正久理事長を来賓に招き、資源・エネルギー対策委員会(秋元勇巳委員長)を開催した。内藤理事長は、「エネルギー・セキュリティの確立」をテーマに約1時間にわたって講演し、その後、出席者と意見交換を行った。
内藤理事長の講演の概要は次のとおり。
エネルギー問題について、われわれは未来からの警告を認識する必要がある。ピークオイル論については、さまざまな考え方があるが、ピーク後、原油の回収率の向上により生産量は横ばいになると予想している。しかし、需要は伸び続けるため、需給のギャップをいかに埋めるかが課題となる。
また、世界的なパラダイム・シフトが起きており、エネルギーに関する政策軸が大きく変化している。ウクライナのガス供給問題も、保護主義の強まりというパラダイム・シフトの1つの象徴的事件である。エネルギー問題への対応を検討する際には、このような変化を前提とする必要がある。
石炭やガス、石油、そして原子力など、さまざまなエネルギー資源について総合的に考える必要がある。石油はとりわけ自動車などにとって使いやすい燃料である。石油産業は巨額の投資を行い、回収率は大きく向上している。従来、産油国は石油価格の高騰による代替エネルギーの出現を危惧していたが、その懸念は今では払拭されている。中国やインドを中心に需要が持続的に拡大することを見越して、現在は、これまで手が付けられてこなかったアフリカなどでの開発が進んでいる。
同時に世界的に見直しの機運が高まっている原子力や環境に適合した石炭の有効活用なども進める必要がある。
中東への供給依存が偏重しているため、ジオポリティカルリスクは避けられない。現在は、イランの核開発が最大の問題になっている。核拡散防止体制の強化については流れが急速に変わりつつあり、再処理工場を自ら持たずに外国へ委託するか、国内で国際レベルの管理をしっかりやっていくかの選択が求められる。国連でこの問題がどのように取り扱われるかは不透明であるが、このような外交問題に対処する際、日本の国際的な地位の低下が懸念される。
アジア域内でのエネルギー協力については、以前、中国も熱心に日本に協力を求めてきていたが、政治的な関係の冷え込みから、現在はモメンタムが失われている。
エネルギー問題と地球環境問題は、コインの裏表の関係にあり、一体的に対応しなければならない。特に、ポスト京都議定書の枠組みについては、日本がルール作りにも積極的に参画し、リーダーシップを発揮することが重要である。
世界各国はエネルギー自給率の維持・向上に躍起になっている。中国やロシアは強力な政治指導力で一体的にエネルギー政策が推し進められているし、アメリカやフランスも骨太の戦略を提示している。官民がバラバラなのは日本だけであり、国を挙げての政策構築体制を作るべきである。
今後同委員会では、5月を目途にエネルギー安全保障に係る提言を取りまとめるよう、さらに議論を深めていく予定である。