日本経団連は1月26日、2005年度の「新卒者採用に関するアンケート調査」の集計結果を発表した。それによると、採用を実施した企業および、採用人数が3年連続で増加していることや、多様な採用形態や手法が多くの企業に定着していることなどがわかった。
同調査結果の概要は次のとおり。
採用を実施した企業は91.2%(前年度比3.6ポイント増)に上り、このうち採用人数を前年度より増やした企業は53.9%(同2.9ポイント増)と、3年連続で増加した。
企業業績の回復や団塊の世代の退職に備えて企業の採用意欲が高まっている一方、採用内定者に対する評価は、「良い人材が採用できた」との回答が58.5%(同0.4ポイント減)と前年度より減少している。企業は採用にあたって学生の質を重視し、求める基準を高めに設定するなど、「厳選採用」がさらに定着・拡大してきたことがうかがえる。
就職採用市場に対する採用担当者の評価については、「昨年に比べて売り手市場であった」との回答が74.8%(同35.8ポイント増)と大幅に増加した。また、採用活動を4月上旬に開始した企業が38.6%(同4.8ポイント増)と最も多くなっている。終了時期については7割弱(66.2%)が前年度と変わらず、早めた企業が10.7%(同1.9ポイント増)であった。
日本経団連の「新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」が採用活動の早期化・長期化傾向に一定の歯止めをかける効果があったものとみられる。
通年採用を実施した企業は、33.5%(同3.8ポイント増)で、このうち「年間を通しての随時採用」が51.1%(同3.8ポイント増)と前年度に比べ増加した。
また、選考プロセスを事前開示した企業は8割弱(79.7%)と、前年度に比べると6.5ポイント増加した。選考プロセスを事前に開示することで、公平で透明性の高い採用選考を印象づけることができるとともに、会社のイメージアップにつながるなど、企業の多くは実施効果を高く評価している。
企業が採用時に重視する要素の上位項目は(複数回答)、第1位「コミュニケーション能力」(75.1%)、第2位「チャレンジ精神」(52.9%)、第3位「主体性」(52.5%)、第4位「協調性」(48.7%)、第5位「誠実性」(39.1%)、と3年連続して同じ順位となった。
倫理憲章に則った採用活動を行ったかについては、「正常な学校教育と学習環境の確保」(90.0%)、「採用選考活動早期開始の自粛」(83.4%)、「公平・公正な採用の徹底」(98.0%)、「情報の公開」(96.1%)と倫理憲章で掲げている4項目において、多くの企業が実施できたと自己評価している。
倫理憲章の趣旨徹底とより実効性を高めるために04年度から実施した共同宣言に対しては、「採用活動早期化の歯止めに効果があった」との回答が59.6%(前年度比1.3ポイント増)に上っている。共同宣言の実施について、企業からは「早期化に歯止めをかけるためには企業、大学、学生の3者が倫理憲章の趣旨を正しく理解する必要がある」との意見が寄せられた。
同調査は就職協定が廃止された1997年から、大学・短大等の新卒者採用活動の実態を把握するために、無記名アンケート形式で毎年実施しているもの。9回目となる今回の調査は、日本経団連企業会員および東京経営者協会会員会社2039社を対象に実施し、728社から回答を得た(回答率35.7%)。回答企業の内訳は、製造業47.1%、非製造業52.9%で、従業員規模別は、1000人以上56.3%、1000人未満43.7%となっている。