日本経団連タイムス No.2798 (2006年1月26日)

小坂文科相との懇談会開催

-「教育改革」で意見交換/21世紀日本支える人づくり施策も


日本経団連(奥田碩会長)は18日、東京・大手町の経団連会館で小坂憲次文部科学大臣と懇談した。同懇談には、日本経団連から、草刈隆郎副会長や三木繁光副会長、出井伸之副会長、和田紀夫副会長らが、文部科学省からは小坂大臣のほか、馳浩副大臣、吉野正芳政務官、有村治子政務官らが出席し、教育改革の方向性や21世紀の日本を支える人づくりの施策について意見を交換した。

国際社会の中で活躍できる心豊かでたくましい人づくりをめざし、17日に文科省が公表した「教育改革のための重点行動計画」の概要説明にあたった小坂文科相は、活力ある人材を育てるための教育の充実を図る施策として、(1)学力の向上 (2)豊かな心の育成 (3)健やかな体の育成 (4)自立し挑戦する若者の育成――を挙げたほか、充実した教育を支える環境の整備として、(1)安全・安心な学校・地域づくり (2)ICT利活用による教育・学習の推進 (3)教育費負担のあり方の検討――を重点的に行っていくと述べた。さらに、家庭・地域の教育力の向上をめざし、「早寝早起き朝ごはん」運動を全国的に実施していくことなどを紹介し、同改革の趣旨への理解と協力を求めた。
また、小坂文科相は大学改革にも言及した上で、「教育改革に対する強い期待に応えられるよう、高等教育機関の国際競争力強化に向けてさまざまな問題に力強く取り組みたい」と改革への意気込みを語った。

続いて、教育問題委員長を務める草刈副会長が、教育改革に関する日本経団連の基本的考え方を説明。グローバル化が進展し、国際的な競争が展開する現代においては、新たな価値を創造する力が求められていると指摘した上で、均質な人材育成を目標とする教育から脱却し、「多様性」「競争」「評価」の視点から教育を抜本的に改革すべきとの認識を示した。
さらに草刈副会長は、中央教育審議会が05年10月に発表した報告書「新しい時代の義務教育を創造する」について、「学校が互いに切磋琢磨する」という点が全く抜けていると指摘。「互いに高めあおう、という姿勢がなければ決して日本の教育は改善しない」と述べ、教育の質の向上に向けた教育機関間の競争促進の重要性を強調した。
また、過去の日本経団連の提言を踏まえ、今後さらに具体的な提言を行うべく、(1)学校選択制の導入促進 (2)教員評価を含めた学校評価 (3)教育の受け手の選択を踏まえた予算配分――などの施策の検討を行っていることを明らかにした。

新規学卒者採用枠拡大など小坂文科相が産業界に要望

■産業界への要望

その後、小坂文科相は産業界に対し、(1)新規学卒者の採用枠の拡大 (2)職場体験の機会やインターンシップ受け入れの拡大 (3)青少年に有害な環境への配慮(問題のあるテレビ番組のスポンサーになることなどへの自粛) (4)発達障害者を含めた障害者の就労支援――などの点を要請した。

■意見交換

続いて行われた意見交換では、日本経団連側から、「今般の義務教育改革の目新しさはどこにあるのか」「高齢者との交流など、地域コミュニティを利用した幼児期からの『人間力』強化を求めたい」「ITの〝負〟の側面(メンタルへルス等)への対応を検討すべき」「わが国の高等教育機関における専門教育では不十分。より高い専門性を身につけさせるためのシステムづくりが課題」「主体性、元気、目標の設定力を培う教育が重要」などの意見が出された。

こうした指摘に対し、文科省側から、「今回の義務教育改革は、『義務教育の構造改革』と位置づけ、目標声�蓿繙就�粮㏍芍��轣蛹≒鳫�笏蜿遐�竚癈鷭∂焜聨纃瘟赧漓�籬�㏍聽轣蛹就娯箍禮綏畊甼畊經邃甞砌祓⊂桿轣蛹Γ蔚飴頏阡繝�籟鹿畩の検証までのサイクルを確立した点が新しい。検証の具体的アクションとして、40年ぶりの学力調査や学校評価を実施する。調査方法や公表の在り方、評価基準など検討課題も多いがしっかり取り組みたい」「『キレる子ども』の問題に対応するため、ゲーム脳と情動との関係などについての研究チームを発足させた」――などの回答があった。
最後に、日本経団連と文科省は、「教育は最も重要な分野」との認識を共有しつつ、教育改革の実りある実現に向けて、改めて懇談の機会を持つことで合意した。

【社会本部人材育成担当】
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