日本経団連の社内広報センターは11月24、25の両日、都内で、第44回全国社内広報大会を開催した。全国各地から社内広報管理者・担当者約240名が参加、「鍛えよう! 現場力―会社を元気にするために社内広報活動ができること―」を総合テーマに、編集者のスキルの向上を図るとともに会社の現場力を高め、高付加価値経営に貢献できる社内広報活動のあり方を分科会や事例発表、経営者講演などを通して探った。
同大会初日の経営者講演では、資生堂会長の池田守男氏が「私の経営マインドと社内広報の役割」と題して講演。
池田氏はこの中で、現代の日本社会について、「日本人に脈々と受け継がれてきた『他者に対する思いやり・優しさ』や『奉仕の精神』といった日本人の美徳ともいえる心が失われている」と警鐘を鳴らし、「それが今日の社会全体のひずみにつながっているのではないか」と述べた。この古来の精神を甦らせ、あらゆる絆、関係性を深く温かいものにするためには「奉仕する精神が必要である」と訴え、社内では「お客さまが頂点、その次が第一線、一番下が社長という逆ピラミッド型組織の運営を行い、実践においてはサーバントリーダーシップに徹している」ことを強調した。
その上で、同氏は、社内広報の役割として「会社全体の方向性を社内に定着させること」と「社内の関係性を強化すること」の2点を挙げた。さらに、相手の立場になって考えたり、相手のことを理解するために、社内広報活動として、社員1人ひとりのイマジネーション(想像力)を高めるような仕掛けづくりを担当者に要望した。加えて、現場や第一線の社員に、全社から支えられているという自覚を持ってもらえるような企画・編集も求め、そうすることこそが現場の社員の働きがいにつながり、ひいては現場力の向上につながることを強調した。
最後に同氏は「社内広報担当者はこれらの問題を十分に意識し、風通しのよい、温かい、信頼関係に満ちあふれた組織の構築を支えていただきたい」と締めくくった。
次いで2005年「日本経団連推薦社内報・推薦映像社内報」の発表と表彰が行われた。今回は優秀賞、総合賞、特別賞など35の社内報・映像社内報が選ばれ(詳細は別掲)、鈴木正人日本経団連常務理事から表彰状と記念品が担当者に授与された。続いて審査の全体講評が行われた後、推薦社内報と推薦映像社内報でいずれも特別賞を受賞した大日本印刷と推薦社内報総合賞に輝いたキヤノン販売の編集者から事例発表があった。
また昼食・休憩時に設置された「社内報なんでも相談」「個人情報保護法相談」コーナーには、熱心な相談者が訪れた。このコーナーは日本経団連社内広報センター委員をアドバイザーとし、社内広報担当者の悩みや問題の解決に役立てるために設けられたもの。
24日午後〜25日の2日間にわたって開催された分科会では、社内広報センター委員がコーディネーターとなり、参加者が合計11分科会・15グループに分かれ、熱い、徹底した論議を展開した。そのうちC分科会では、「現場の力を高める」という目的を達成するための社内広報戦略とは何かについて、「同業他社との合併後の業績悪化をどのように乗り切るか」「外食産業の急拡大化による社内諸制度の不備をいかに克服するか」など3つのケーススタディを通して話し合い、戦略シートをもとに自社の社内広報戦略を作成した。C分科会参加者からは「まさに自分が取り組もうとしていた課題が討議され参考になった」「分科会を通して刺激されたことで具体的な戦略が浮かんできて本当によかった」などの意見が寄せられた。
大会の締めくくりでは、「現場力を高めるために広報ができることは何か」と題した『日経ビジネスアソシエ』編集長・渋谷和宏氏の特別講演を聞き、閉会した。