日本経団連タイムス No.2792 (2005年11月24日)

四国地方経済懇談会開く/「民自律型経済社会の実現と四国経済の活性化に向けて」テーマに

−社会保障制度のあり方、社会基盤整備など論議


日本経団連(奥田碩会長)と四国経済連合会(四経連、大西淳会長)は16日、高松市内で「第42回四国地方経済懇談会」を開催した。同懇談会には、奥田会長はじめ御手洗冨士夫副会長、西岡喬副会長、櫻井孝頴評議員会副議長、平島治評議員会副議長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長ら日本経団連首脳が出席。また四経連の会員企業の幹部など約160名が出席し、「民自律型経済社会の実現と四国経済の活性化に向けて」をテーマに、社会保障制度のあり方や環境エネルギー問題、社会基盤の整備、地方分権の推進などといった、日本ならびに四国地方の抱える諸課題について意見交換を行った。なお、日本経団連首脳は、同懇談会に先立って、香南町にある隆祥産業の香川工場を視察。マイクロエレクトロニクス技術を核に、視力測定器をはじめさまざまな電子機器、スポーツ用品、地ビールなど幅広い分野の製品を製造している同社の開発部門・製造部門を見学した。

同懇談会ではまず、大西四経連会長が開会あいさつに立ち、四国経済の現状について「緩やかに改善しつつある」との見方を示しながらも、燃料や原材料の高騰、米中経済の動向など、懸念要因があることを指摘した。次いで大西会長は、「官から民へ」の流れが強まる中で、「公共投資・地方の社会基盤整備は不要」と言わんばかりの論調が見られることは大変残念だとし、大都市と地方とでは官民の役割に違いがあることを指摘。四国にとっては、公共投資、特に高速道路のようなネットワークインフラの整備が不可欠であり、その推進が、人々の交流や民間投資を促し、「民自律型経済社会」への道を切り開くと述べた。
さらに大西会長は、地方の自立の問題について触れ、権限と財源を地方に移し、地域自らが政策を考え、実行するのが効果的とした上で、こうした新しい地域のあり方をめざすには四国が1つになって取り組まなければならないと述べ、四経連として、四国4県をエリアとする「四国州」の形成に取り組んでいく考えを示した。

活動報告

奥田会長のあいさつに続く活動報告では、まず日本経団連側から、経済法制改革をめぐる最近の動きについて御手洗副会長が、観光振興への取り組みについて西岡副会長が、少子化問題への対応について櫻井評議員会副議長が説明。四経連からは、「地域の自立的、持続的な発展をめざして」と題して石黒治也副会長が、「四国独自の自然や歴史・風土を生かした交流人口の拡大に向けて」と題して森本惇副会長が、「自立・連携と安心・安全な暮らしのための社会基盤整備の促進に向けて」と題して麻生俊介副会長が活動報告を行った。

この中で石黒副会長は、地域の自立は道州制も含めた行政システムの改革だけでなく、産業振興による経済的自立が重要であることを指摘。四国でウエイトの高い基礎素材型産業は絶えざる技術革新によって高付加価値を生み出しており、こうした四国の特徴・強みをさらに生かし新産業・新製品を作り出していくには産学官の連携が必要として、四経連が、四国産学官連携推進会議などを通じ新産業群形成に向けて積極的な支援や協力を行っていることを紹介した。

また、森本副会長は人口減少社会を迎える中で、地域が生き生きと自立していくには交流人口の拡大を図ることが重要と指摘。四国には観光資源として魅力的な自然や歴史、文化が豊富にあることを説明し、(1)四国の誇る歴史や文化に多くの人が触れられるように四経連はじめ四国の官民15団体が「歴史文化道」事業を推進している (2)交通ネットワークの整備を生かしながら、スポーツ等も含めさまざまな分野で交流人口の拡大を図りたい――などと述べた。

さらに、麻生副会長は、四国西南部、東南部が高速道路の空白地帯であることを指摘。西南地域の四万十川を中心とした観光振興、東南地域の室戸の海洋深層水を用いた新ビジネスなど地域の資源を生かした取り組みを成功に結び付けるために、四国を8の字に結ぶ高速道路ネットワークを早期に完成させ、人やモノがスピーディーに行き来できるようにすべきとの考えを示した。
また本四架橋の通行料金の高さが、四国の工場立地の条件を悪くするなど産業活性化を妨げていることを挙げ、料金引き下げのための新たなスキームづくりの必要性を訴えた。

新産業、新規事業の創出など討議

自由討議

自由討議では、四経連の三村尚史常任理事が地方分権の推進について、岸一郎常任理事が新たな国土づくりについて、佐田末喜常任理事が広域交通ネットワークの形成について、星川一冶常任理事が新産業、新規事業の創出について、十川道信・JR四国バス社長が環境・エネルギー問題への取り組みについて、伊賀三千廣・高松信用金庫理事長が社会保障制度改革への取り組みについて、日本経団連の考え方やどのような取り組みを行っているかを質問、日本経団連首脳がこれに応えた。
そのうち環境問題への取り組みでは、国民や企業、一人ひとりの自主的な行動が重要であり、新税導入には強く反対するということで、意見が一致した。

奥田会長が四国企業の独創的技術力評価

最後に、同懇談会を総括した奥田会長は、「(活動報告や自由討議などを通じて)地域の力で物事を解決しようという気概を感じた。四国はまさに変革期にある」と述べるとともに、四国には、独創的な先端技術を有する企業が多いと評価した。また社会基盤整備の問題に言及し、災害に備える意味でも道路網の整備が必要であると述べた。

【総務本部総務担当】
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