日本経団連は15日、「海洋開発推進のための重要課題について」を発表した。同提言では、(1)自然災害による被害の軽減 (2)資源・エネルギー開発 (3)わが国の国際的なプレゼンス向上――といった観点から海洋に注目し、海洋開発推進のための重要課題について述べている。日本経団連では今後、同提言に基づいて、政府や与党等に働きかけを行っていくこととしている。同提言で指摘している重要課題は以下のとおり。
国連海洋法条約においては、沿岸国の200カイリまでの海底等を大陸棚としているが、海底の地形や地質が一定条件を満たす場合、大陸棚の外側の限界を最大350カイリまで延伸することができる。その結果、日本の国土の1.7倍の大陸棚の主権を獲得し、探査や資源開発の権利を主張することができるようになる。
しかしながら、大陸棚の延伸が認められるためには、裏付けとなる科学的・技術的データを国連に報告し、勧告を受ける必要がある。政府が実施している調査が期限内に完了するよう、必要かつ十分な予算を確保すべきである。
海洋は熱輸送や水循環などの気候変動や、地震などの自然災害の発生に深く関係している。したがって、海洋の諸現象解明のための観測・探査を行い、国民の安全・安心な生活の構築に活用することが極めて重要である。具体的には、地球深部の観測・探査、気候変動や自然災害の監視・予測・警戒システムの開発、CO2海底隔離の研究――などを推進すべきである。
海洋は豊富な生物・エネルギー資源や鉱物資源を有している。なかでも、メタンハイドレートについては、日本近海にわが国の天然ガス使用量の100年分が埋蔵されているともいわれている。わが国は資源の多くを輸入に頼っており、海洋資源の調査・探査を継続的に行い、資源確保のための技術開発に力を入れることは、資源対策やエネルギー安全保障上、極めて重要である。具体的には、メタンハイドレートからのメタン抽出技術の開発、海洋バイオ技術の開発、海水淡水化技術の向上――などを推進すべきである。
これまで述べてきたように、海洋には多様な面があり、多くの官庁が関係している。しかしながら、海洋は国益に直結する分野であり、官庁の縦割りを廃し、政府が一体となって対応する必要がある。
また、海洋に限らず、最も重要な課題は優秀な人材の確保であり、国際的に活躍する研究者・技術者を養成するとともに、国民全体の海洋への関心を高めるため、小・中・高等学校における海洋教育の充実、国民への啓蒙などを実施することが重要である。