日本経団連タイムス No.2790 (2005年11月3日)

「CSR推進ツール」発表

−あらゆる企業のCSR推進めざす


日本経団連の企業行動委員会と社会貢献推進委員会の合同部会である社会的責任経営部会(廣瀬博部会長)は10月4日、国内企業のCSR推進に資することを目的に作成した「CSR推進ツール」<PDF>を発表した。同部会はまた、日本経団連会員企業のCSR活動の現状や今後の方向性を把握するために「CSRに関するアンケート調査」<PDF>を実施していたが、その結果も同日発表した。両資料は、日本経団連のホームページに掲載されている(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/csr.htmlの「CSR全般」を参照)。

◆要素マトリックスと実例集から成る「CSR推進ツール」

日本経団連は2004年に「企業行動憲章」「実行の手引き」<PDF>をCSRの視点を盛り込む形で改定した。その結果、「実行の手引き」はCSR活動の指針ともいえるガイドブックとなったが、企業の担当者からはさらに次のような意見が寄せられた。

  1. 「実行の手引き」では、CSR活動における諸課題が「企業行動憲章」の条文に沿って整理されている。これをCSRで注目されている「コンプライアンス・企業倫理」「情報」「人権・労働」などの課題分野と、「消費者・顧客」「取引先」「株主」などのステークホルダーごとに分類すれば、企業が取り組む分野をより明確に把握できるのではないか。
  2. 「実行の手引き」だけでなく、各種評価機関から寄せられるアンケート調査項目なども踏まえて諸課題を整理できれば、より効果的ではないか。
  3. CSR活動を実践する際に参照できる企業の実例集があれば、日本のあらゆる企業のCSR推進に役立つのではないか。

「企業行動憲章」と「実行の手引き」の改定で中心的な役割を果たした社会的責任経営部会は、こうした意見に対応すべく、約1年にわたって検討を進めた。その結果、完成したのが「CSR推進ツール」である。

同ツールは、「CSR主要要素のマトリックス」と「CSR主要項目と参考事例」の2つから成る。「CSR主要要素のマトリックス」は、課題分野を縦軸に、ステークホルダーを横軸に取って、CSRを推進する上での課題を整理したものである。企業はこのマトリックスを用いることで、幅広い視野から課題を確認することができる。なお、課題の整理は、「実行の手引き」だけでなく、各種評価機関から寄せられるアンケート調査項目なども踏まえている。
「CSR主要項目と参考事例」は、「CSR主要要素のマトリックス」で整理された諸課題を、企業がどう実践しているかを示した実例集である。部会の関係企業から、合計304事例が収集されている。事例は、大企業の先進的なものから、多くの企業で実践されている一般的な事例まで、幅広く集められているため、規模・業種を問わずあらゆる企業が参考にすることができる。

社会的責任経営部会は、事例をさらに充実させるなど、「CSR推進ツール」がより使いやすいものとなるよう今後も検討を行っていく。

75%が「意識して活動」

◆日本経団連で初めて実施したCSRに関するアンケートの調査結果も発表

「CSRに関するアンケート調査」は、日本経団連会員企業のCSR活動の現状や今後の方向性を把握する目的で、2005年3月から4月にかけて実施された。調査は、社内体制の整備、報告書作成状況、取り組み分野などCSRに関する諸項目について実施され、572社から回答があった(回答率43.2%)。CSRに関する調査は日本経団連としては初めてのものとなる。
調査結果の概要は次のとおり。

  1. CSRを意識して活動している企業は75.2%。
  2. CSRにトップダウンで取り組んでいる企業は79.0%。
  3. 社内体制については、52.5%がCSRを推進する社内横断的な機関を、66.3%がCSR専門部署を設置、または専任担当者を置いている。
  4. CSRに関する報告書を発行している企業は55.4%。アニュアル・レポートなどで報告している企業と合わせると、66.4%がCSRに関する報告を実施。
【社会本部企業・社会担当】
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