日本経団連タイムス No.2790 (2005年11月3日)

第58回東北経営者大会開く

−活力に満ち、自立した魅力溢れる東北実現へ決意示す大会決議採択


東北6県の経営者協会による第58回東北経営者大会(主催=東北経営者協会、岩手県経営者協会、協賛=日本経団連)が10月27日、盛岡市内のホテルで開かれた。同大会には、東北6県の経営者協会会員企業の代表者ら約610名が参加。日本経団連の奥田碩会長が基調講演を行ったほか、エネルギーや社会保障、雇用・労働、政治・経済、地域振興、産業振興問題などについて、和田紀夫副会長、加藤丈夫労使関係委員会共同委員長ら日本経団連首脳と参加者が意見を交換。大会の最後には、「活力に満ち、自立した魅力溢れる東北」の実現に向けて一体的に取り組むとの決意を示した「大会決議」を採択した。

奥田会長が基調講演/「こころの豊かさ」を強調

永野勝美・岩手経協会長、幕田圭一・東北経協会長の主催者あいさつ、増田寛也・岩手県知事の来賓あいさつに続いて、「『こころ豊かな』人・企業・社会をめざして」をテーマに基調講演を行った奥田会長はまず、日本経済が安定成長を実現するためには、日本企業の大勢を占める中小企業や地場産業の体質が強化されることが不可欠と指摘。そのためには企業は常に経営革新を行うことが必要と述べ、企業が対処すべき課題として、(1)グローバル化への対応 (2)国際競争力の強化 (3)人材力の育成・強化 (4)現場力の向上 (5)人口減少社会への対応――を挙げた。
このうち人口減少社会への対応については、女性や若年者、高齢者、外国人などさまざまな人々の活用を、より真剣に考え、その持てる能力を最大限発揮させる多様性を活かす経営が、すでに重要な課題になっていると説いた。
また奥田会長は、日本の現状について、物質的に豊かになった反面、精神的な豊かさはどこかにいってしまったと指摘。「こころの豊かさ」を考える際の大事な視点として日本人固有の精神論である「武士道」を挙げ、高く尊い精神や道徳心を追求する「武士道」のような「心の柱」を持つことの必要性を強調した。同様の考えから経営者に対しては、「高い志」と常に「自制する心」を持つとともに、日経連創設時のスローガンである「経営者よ、正しく強かれ」の持つ意味を改めて考えるよう求めた。

地域・産業振興などで意見交換

参加者と日本経団連との意見交換においては、参加者から日本経団連に対して (1)ITER(国際熱核融合実験炉)関連研究施設の青森県六ヶ所村への立地に対する協力・支援(青森経協) (2)医療保険制度を含めた社会保障制度の持続可能な仕組み、国民負担のあり方(秋田経協) (3)少子化対策としての「育児保険創設や目的税的な新税の導入」に関する考え方(秋田経協) (4)少子化対策としての、子育ての意欲醸成の進め方などに関する考え方(山形経協) (5)労働市場における女性の役割に関する考え方(山形経協) (6)防災基盤整備型社会資本整備の観点からの公共投資に関する見解(宮城経協) (7)原油価格が高騰する中での、経済情勢の今後の見通しと、経営のリスク管理を含めた地域の経営者に対するアドバイス(宮城経協) (8)森林保全と林業振興の観点からの林業整備、林業が産業として成り立つようなシステムづくりなどに対する見解(福島経協連合会) (9)農業振興のための法規制の改正・撤廃による株式会社の農業分野への大胆な参入などに対する見解(福島経協連合会) (10)中心市街地活性化の観点からの地方都市における中心市街地の核店舗として立地した大型店の撤退とそれに伴う跡地利用策で悩んでいる状況に対する現状認識(岩手経協) (11)国際観光立国を推進する立場に立っての地方における観光への取り組みに対する考え方(岩手経協)――についての質問や意見表明があり、和田副会長、加藤共同委員長らがこれに応えた。

大会ではこのほか、大阪市立大学の佐藤全弘名誉教授による特別講演「橋を架けた人〜新渡戸稲造〜」を聴いた。

大会の最後には、東北の経済界が「活力に満ち、自立した魅力溢れる東北」の実現をめざして一体的に取り組むとの決意を示すとともに、(1)防災基盤型の公共投資を重点的に実施する。また、地方都市の中心市街地活性化支援施策の充実と観光資源開発に資する基盤整備に取り組む (2)社会保障制度は、その負担において企業の競争力低下を避け、国民が納得できる持続可能な形で構築する。特に少子化対策として、子育て支援のための経済的支援・法的制度などの環境整備を推進する (3)若年者支援を円滑に推進するため、行政・学校・家庭・地域社会が連携し、一丸となって取り組む体制を強化する。職場における女性の役割が増大していく中で、女性の能力を最大限活用できる体制の確立を図る (4)農林業が産業として自立・活性化し、意欲ある企業の参入拡大を図るため、法規制の見直しを行う。ITERの関連施設の国内誘致候補地を青森県六ヶ所村とし、立地の推進を図る――などを、政府や関係機関に対して要請する「大会決議」を採択して閉会した。

【組織協力本部組織協力担当】
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